第1回 チームで成果を上げるために大切な要素とは 青島未佳氏 産学連携機構九州 総合研究部門 部門長
先行きが不透明で、人材も働き方も多様化する時代に突入している。そんな変化の多い時代でも、間違いなく言えることは、業績を上げるには「チーム力」が欠かせないということだ。
今連載では、九州大学と九州大学TLOが行ったフィールドリサーチを基に、パフォーマンスの高いチームづくりについて、全4回にわたりお届けする。
●暗黙知は通用しない
どのような組織であれ、大半はチームで仕事をしており、チームワークがうまく機能しなければ高い成果を上げられないことは明白だ。
かつて世界から称賛され、米国の企業などでも取り入れられてきた「日本的経営」の特徴のひとつは、チームワークである。だが、1990 年代に成果主義・個人主義の潮流を迎えると、日本企業の中でもチームの業績より個人の業績や成果を高めることを優先する傾向が強まり、“チームワーク”や“チームの力”が注目されることは少なくなった。
今はVUCA※の時代といわれ、グローバル化やM&A、少子高齢化の加速、労働市場の流動化など企業や組織を取り巻く環境はますます変化している。そんな中、多様な人材の活躍を推進するためには、日本流の同調主義的なチームワークや“言わなくても分かるだろう”といった暗黙知ベースのマネジメントスタイルは通用しない。トップダウンで決めた方針を現場が粛々と実行するのではなく、現場レベルでさまざまなアイデアを出し、改善・改革を自ら進めていく、そんなチームワークやチームマネジメントのスタイルが求められるのではないか。
このような課題認識の下、九州大学と九州大学TLOでは、10 社(約500組織・計4500人)にわたるフィールドリサーチを通じて、高業績を上げているチーム(高業績チーム)とそうでないチームにどのような違いがあるのか、高業績チームをつくるためには、どのようなマネジメントが必要なのか、という問いに対して、データ分析における解析とインタビューを基に、その答えを明らかにした。
※Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)のこと。
[注]本研究で対象としているチームは、1チーム・3~ 20人程度で構成される目的を同じくした集合体であり、会社・事業部という組織単位ではないことを前提としている。
●高業績チームの4つの機能
本研究の結果、高業績チームには、①コミュニケーション(心理的安全)、②目標共有(ビジョン)、③相互協力(コラボレーション)、④チーム学習(ラーニングオーガニゼーション)の4つの機能が備わっていることが判明した(図1)。
ここで特筆したいことは、チームにこの4つの機能を備えるには、段階があるということだ。チームづくりは家づくりと同じで、どんなに上物がよくとも土台がしっかりしていないとすぐに崩れてしまう。その土台となるのが、①コミュニケーションである。高い成果を上げるチームには、土台となるコミュニケーションの基盤がきちんとできているのである。これはパス解析※という統計手法を用いて各要素を分析した結果からも明らかになっている(図2)。
※各要素間の因果関係を見つけ出す統計解析手法のこと。「相関分析」の場合、因果関係は不明だが、「パス解析」を行うことによって、どちらの要素が原因なのかを推定することが可能となる。