外国人材の心をワシづかみ! 日本発のマネジメント 第5回 アジア現地社員の5大モチベーターと対応法
世界の人材争奪戦において遅れをとる日本。
打開策は現地の人々のより深い理解、そして日本企業ならではの育成、伝統にある―。
異文化マネジメントに精通する筆者が、ASEANを中心としたグローバル人材にまつわる問題の解決法を解説します。
「あなたの熱意次第ですよ!」
ASEANの日系企業における共通課題が幹部候補社員の採用です。
シンガポールにある日本の代表的な電機メーカーの面接に臨んだシンガポール人幹部候補の話ですが、面接中、アニメなどクールジャパンの話で盛り上がり、仕事の話はほとんどしないまま合格してしまったそうです。「こんなんでいいんでしょうか?」。返す言葉がありませんでした。
また、ある会社では、欠員だった営業マネジャー候補を絞り込み、最終面接をしていました。その時、面接担当者はこれまで一度も聞いたことがない質問をされて仰天したそうです。それは、「Why do I have to work foryou? 」という質問でした。「なぜ私がって、就職したいから面接に来たんでしょ?」とムッときて、「働きたいかどうかはあなたの熱意次第ですよ!」と言ったそうです。
気持ちは分かりますが、この返事で本当に良かったのでしょうか?
実は、求職者が聞きたかったのは、「もし私が入社したら、自分の能力を活かして、どんなやりがいのあるビジネスができるのでしょうか?」だったのです。言い換えれば、「あなたが私を絶対にほしいと思う理由を教えてください」ということです。つまり、絶対にここに就職したいと思わせるほどの、この会社の素晴らしいところ、自分が生き生きと大活躍しているイメージ||これを面接者に言ってほしかったのです。
アジアの先端企業は、国境を軽々と飛び越え、世界中のさまざまなルートで経営手法の先端ノウハウを学習し、ビジネスチャンスの情報交換を対面で行い、グローバルナレッジをすさまじいスピードで増殖させています。それを肌で感じている世界の求職者が求めるレベルは当然高いのです。究極の質問には、究極の答え“ファイナルアンサー”が必要です。
欲求にどう応えるか?
それでは待遇や昇進機会以外で、私たちがアピールすることのできるモチベーター(動機づけ要因)にはどのようなものがあるのでしょうか。私のアジア在任中に、シンガポールPHP研究所(当時)やシンガポール日本商工会議所などの協力を得て、主にアジア各国で開催した公開セミナーを通じて得られた調査結果を使って説明していきます(図1)。モチベーターを抽出した元データは2003 年のものですが、対応方法は最新のものです。
図1の対応方法欄の内容に沿って、各モチベーターへの具体的なアプローチ方法を見てみましょう。