おわりに 社員を成長させるローテーションに必要なのは、 「明確な目的」と「個別管理」
ローテーションは有意義なのか
日本の多くの企業では、定期的な人事異動によるジョブローテーションが当然のように行われている。そのメリットは、従業員にとっては幅広い知識やスキルを習得できること、企業側にとっては従業員の適材適所への配置や、職場のマンネリ化の予防などが挙げられる。
だが、一般的に“全ての総合職”を対象とした定期的なローテーションは、新卒一括採用や終身雇用という制度を持つ日本ならではのシステムだといえる。そのため、グローバル化に伴い人材の質が高度化した現代にはそぐわないのではないか、ロスが多いのではないか、という否定的な意見もある。ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング代表のロッシェル・カップ氏は、「世界と戦っていくためには、悠長に人事ローテーションをしている場合ではない」とバッサリ言い放つ(OPINION2、34 ページ)。
今特集では、ローテーションについて、カップ氏のような否定派も含めて、識者に意見を求めた。ローテーションを個人や組織の成長につなげるには、どうすればよいのか。そこには、どんな“戦略”があって然るべきなのか。まずは、浮かび上がった現制度の改善ポイントを考えたい。
異動に戦略を持たせるには
(1)個人・異動先双方の目的を明確に
現状の日本のローテーションの問題として多く挙がったのが、その目的が曖昧であること、目的があったとしても異動する本人にとって納得できる説明が成されていないことである。