人材教育 The Movie ~映画でわかる世界と人~ 第48回 『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』川西玲子氏 時事・映画評論家
「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」
2014年 イギリス・アメリカ 監督:モルテン・ティルドゥム
『イミテーション・ゲーム』は、第二次大戦中、ある暗号を解読したイギリス人数学者の、孤独な人生を描いた映画である。第二次大戦下における実在の秘話としても、また情報戦の実態を知るうえでも興味深い。アカデミー賞8部門の候補作に上って脚色賞を受賞した。
主人公のアラン・チューリングは少年時代、勉強はできるがこだわりが強く、よくいじめられていた。長じて大学の研究員になったが、政府から思いがけない依頼が来る。それはドイツが叡智を結集して開発した最強の暗号、「エニグマ」の解読だった。
エニグマのパターン数は天文学的で、その全てを調べ終えるには、特任チームが24時間休みなく取り組んでも、2000万年かかる計算になる。しかも毎日、午前零時に組み合わせが変わって、一からやり直しになるのである。気の遠くなるような作業だ。
能力は高いが協調性のないアランは、ひとりだけ別行動を取って機械の製作に熱中し、他のメンバーから嫌われる。だが唯一の理解者ジョーンから、こう助言を受けるのだ。「あなたがどんなに優秀でも、エニグマはその上をいく。本気でパズルを解くにはみんなの協力が必要。嫌われたら誰にも助けてもらえない」。
この助言に心を動かされたアランは翌日、りんごを買って配るという、柄にもない行動を取る。人付き合いの悪いアランが、りんごを手渡すという気配りを見せたことで、周囲の態度は一気に軟化した。チームは目標に向かってまとまり、やがて傍受に携わっている女性の何気ない一言からヒントを得て、ついにエニグマの解読に成功する。