寺田佳子のまなまな 第7回 主夫芸人・家政アドバイザー 中村シュフ氏に聞く 「笑顔をつくる家事デザイン」(前編)
今回のお相手・主夫芸人で家政アドバイザーの中村シュフさんは、大学の家政学部を卒業した正真正銘のプロ主夫。
さらに、かつては漫才コンビを組んでいたという異色の経歴の持ち主です。
「家事は、緻密なマネジメントのもと進められる一大プロジェクト」と語る、中村さん。
その真意と家事から得られる学びのヒントを、2号にわたって探ります。
「自分らしい選択」をする
「きゃあぁぁぁ~、かわいぃぃぃ~!」
今回のゲスト・中村シュフさんがバッグから取り出したものを見て、不覚にも黄色い声を上げてしまった。
だって、手作りのちっちゃなお弁当には海苔で作ったキラキラ星が散りばめられているし、これまた手作りの柔らかなフェルトの指人形にはちゃんとお父さんとお母さんと子どもたちの笑顔がアップリケされているし、オレンジ色の美味しそうなニンジンのオモチャには食べやすいようにひと口サイズの切れ込みが入っているんですもの!
その愛らしさといったら!
ピンクのエプロンが似合い過ぎる「主夫芸人」こと中村シュフさんは、どんなふうにして、こんなに温かくて楽しくて微笑ましい世界を創ってきたのだろう?そもそものきっかけは、意外な運命の巡り合わせにあったようだ。
中村さんの「主夫物語」は、バンカラで有名な男子高に入学した20年前の、「男子も家庭科が必修になっちゃった」事件から始まる。
「イクメン」「家事メン」などという言葉は、まだ影も形もない時代である。同級生のほとんどが、「睡眠時間」、「早弁時間」、あるいは「他の授業の予習時間」と位置づけていた「家庭科」の授業であったが、なぜか彼にとっては特別で大切な時間だった。「これからは男子こそ家庭科が必要な時代になります」「皆さんはその草分けとなる人材です」と、熱心に語る女性教員の言葉がスッと心に染みこんだのだ。
調理、栄養、衣服、家庭生活、ご近所さんとの関わり方……。一つひとつのテーマが身近で、具体的で、人生を豊かに彩る貴重なワザとノウハウに満ちている。授業を熱心に聞き、しっかり「家庭科萌え~」の高校生活を満喫した後、家庭科教員をめざして、大学の家政学部を選んだのは実に自然な流れだったのだが……。
「ウチの高校から家政学部に進学するのは初めてのケースでしたから、職員室はちょっとザワザワしましたね(笑)。両親には、『教員免許を取るんだ!』ということを強調して煙に巻いたので、『あぁ、そうなのか』と。ただ友人たちからは、『お~!中村らしい選択だなぁ』と言われましたね」
はて、「らしい選択」とは何か。
それは、「面白そうなほうにいく」「誰もやっていないことに挑戦する」、そして「気負わず自然体で飛び込んでみる」ということ“らしい”。