CASE 2 芙蓉総合リース アサーション・プレゼン・交渉力など―― ヒューマンスキルを段階的に 繰り返し学ぶ教育設計
1969年の設立以来、日本のリースビジネスのリーディングカンパニーとして、幅広い分野で事業を展開してきた芙蓉総合リース。
同社が人材育成において重視しているのが交渉力・提案力・論理的思考力といった “ヒューマンスキル”の向上だ。
特に充実しているのがアサーティブ・コミュニケーションの研修で、必要な時期に段階を重ね、繰り返し学ぶ教育設計がなされている。
●背景と経緯 ヒューマンスキル研修を拡充
芙蓉総合リースが人材育成策の強化に乗り出したのは2011年。中期経営計画の中で人材育成を柱の1つに掲げ、総務部に教育研修室を設置すると共に、教育研修体系を刷新した(図1)。ポイントを置いたのは次の2点である。①新入社員の早期戦力化を目的に、OJT・研修・自己啓発の3つを組み合わせて重点的に教育するプログラムに改編し、若年層(入社1~5年次)の研修を拡充②従来の階層別研修(1、2、5年次と新任管理職に実施)に足りない点を加え研修体系全体を見直し
こうして出来上がった新しい体系(総合職約480人が対象)は、基礎となる実務知識の習得に加え、交渉力・提案力・論理的思考力などのヒューマンスキルを多角的に高めるプログラムとなっている点が特徴だ。
それ以前に、ヒューマンスキル系の研修がなかったわけではない。2001年からリーダーシップ、コミュニケーション、ネゴシエーションなどの研修を導入し、他者との良好な関係を築いたり、交渉をうまく進めたりするためのスキルを磨く教育も行ってはいた。しかし、中心は、法務や経理、融資など、仕事に必要な知識を教えるものが多かった。
ヒューマンスキル系研修を充実させた背景には、業務が高度化してきたことがある。リース業界は2000年頃には約8兆円の市場規模だったが、リーマンショック以降、5兆円を切った(リース事業協会調べ)。民間設備投資に占めるリースの割合は縮小傾向にあり、合併によるリース会社の再編が進むなど、業界を取り巻く環境が激変した。そうした中、“金利勝負”の過当競争から脱却するには、社員のヒューマンスキル向上が重要と判断したのだ。
「ただ“モノ”のリースをお薦めすれば良いわけではなく、関係を築き、お客様の課題を引き出して高付加価値を提案する力が必要です。また、関係部署を巻き込んだり、メーカーやディーラーと連携することもあります。その一番のベースとなるのが、コミュニケーション力なのです」(総務部教育研修室調査役・平岡あゆみ氏)
●研修の全体像 入社から5年で基礎固め
(1)1年次
まず年次・階層ごとの研修を大まかに紹介し、その後、ヒューマンスキルに関する研修内容を解説していこう(図1)。
同社は、入社から5年間を「基礎固めの時期」と位置づけ、中でも新入社員に対する研修を充実させており、年に12のプログラムを実施。例えば「フォローアップ研修」は、知識習得のための研修だ。法務、経理、審査、事務などを、担当部署の社員が教える。
営業部門では、2年次になると担当顧客を持って“独り立ち”する。そこで、1年次の終わりに営業として成長する土台を築く「営業スタートダッシュ研修」を実施している。