OPINION3 プレゼンテーション 相手の利益を語ることで、 心を動かし、行動に導く
うまいプレゼンテーションというと、きれいなスライドに、熱意を持って自分の思いを伝えることと思いがちだ。
だが、「プレゼンの成否のカギは他にある」と話すのは、人材育成コンサルタントで国際プレゼンテーション協会副理事長の脇谷聖美氏。
効果的なプレゼンの決め手はどこにあるのだろうか。
企業価値を左右する
プレゼンテーション(以下プレゼン)は、今やビジネスパーソンには欠かせないスキルである。そのことは、既に日頃の業務を通じてお分かりのことだろう。事実、私は多くの企業や団体、自治体からプレゼンにまつわる相談を受けるが、事業部の中でも開発や企画部門、IT系や社会福祉系と実に多様だ。プレゼン力が求められるのは、何も営業部門に限らないのである。
そうした中、特に近年はプレゼン力の差がコンペの通過に強く影響しているという話を耳にする。かつては「(商品またはサービスを)使ってみれば、良さが分かります」「とにかく損はありません」と、曖昧な言い回しが通用したが、現代のビジネスは使って様子を見るほど呑気ではない。またブランドバリューだけで勝負できる時代でもなくなった。
もはやプレゼン力は企業の価値を決定づけ、その力の欠如は自社の競争力、信用力の低下に直結すると言っても過言ではない。
ところが日本では、プレゼンを苦手としている人が多い。学生時代にプレゼン教育を受けてきた若い世代はともかく、そうではない30代以上の人々にとっては悩みの種ともいえる。
だがその苦手意識の裏には、日本人のプレゼンに対する“3つの誤解”がある。
プレゼンの3つの誤解
●誤解1:プレゼンの定義
まず言えるのは、プレゼンの定義そのものに対しての誤解である。プレゼンというと、きれいなスライドを見せ、熱意を持って自分の思いを伝えること……といったイメージはないだろうか。
そもそもプレゼンは、もっと身近なものである。例えば、人が一生のうちに最も多く経験するプレゼンは、“自己紹介”だ。初見の相手に自身を魅力ある存在に映るよう紹介するのだから、立派なプレゼンである。
さらに言えば、コミュニケーションのほとんどはプレゼンで成り立っている。会話中の相づちひとつ取っても、「私はあなたの話を理解していますよ」ということが話し手に伝わらなければ意味がない。相手は相づちを打つあなたを見て、さらに盛り上げたり話題を変えたりするのだから、これも広義のプレゼンと言えるだろう。
つまりプレゼンを定義すると、「相手の利益を語り」、かけ合いを通じて「相手を行動に導く」働きかけ、となる。
この時に意識すべきは、“You”または“We”を話の中心に置き、“I”で話をしないことだ。話し手が伝えたい言葉を相手が耳にしたい表現になるように置き換え、聴きたいと思う順番に並べ替えて初めて、プレゼンは成立する。