巻頭インタビュー 私の人材教育論 社員に気づきを与えるには まずは経営側がチャレンジを
1953年に鉄管・継手・バルブと付属品販売業からスタートし、水と住まい、そして農業の領域で事業を展開。
そうして「元気で快適な生環境」を支える企業が渡辺パイプだ。
創業時からのフロンティア精神を土台に、1994年には事業コンセプトとして「セディアシステム」を打ち出し、御用聞き営業からの脱却等、事業や組織の在り方の改革を行ってきた。その紆余曲折の道のりや、背景にある考えとは。
ワンストップ戦略で成長
―業績好調が続いているようですが、成長の秘密はどこにあるとお考えでしょうか。
渡辺
渡辺パイプはもともと水道資材の流通から始まり、そこから派生して住宅設備、建材、電材も手がけています。さらに施設園芸用ハウスなどのグリーン事業と合わせて、「水と住まいと農業」の3つを事業ドメインとして展開しています。
そうした当社の基本戦略の1つが、「ワンストップ」です。住宅関連業界は、メーカー主導でプロダクトが強い時代がずっと続いてきました。あるメーカーの商品を買いたければ、そのメーカーの代理店や特約店からしか買うことができませんでした。しかし、メーカーごとに代理店が違うと、お客様にとっては複数の製品を比較検討することが難しくなります。そこで当社があらゆるメーカーの商品を取り扱うことで、問題を解消したのです。
ワンストップ戦略は、流通の力がある程度ないとできません。現在、当社は3000社のメーカーとお付き合いさせていただいていますが、少しずつ積み重ねてきたことで流通の力が増し、ようやく当社がめざす形が出来上がってきました。それが近年の成長につながっているのでしょう。
―流通量が増えた理由は。
渡辺
当社はメーカーから見ると販売代理、また水道工事店や土木工事店、リフォーム店や工務店といったお客様から見れば購買代理の機能を担っていますが、単に販売や購買の代理をするだけでは取引は増えません。そこで当社がめざしたのは「マーケティングパートナー」。メーカーがどれほど素晴らしい製品をつくっても、製品だけでは機能しません。また、施工業者がどれだけ素晴らしい技術を持っていても、適切な施工がなければエンドユーザーに喜んでもらうことはできません。それを取り持つ流通の機能がマーケティングパートナーという考え方です。
具体的には、施工業者に対しては確かな品揃えをして、商社の目で必要なものを選んで提供する。メーカーに対してはお客様の声をフィードバックして商品開発に活かしてもらう。そしてメーカーと施工業者をつなぎ、エンドユーザーの快適な暮らしや豊かな社会のために、価値を届けることです。
これこそ「売り手よし、買い手よし、世間よし」の三方よし。この姿勢を続けてきたことで信頼され、売上も増えてきたのだろうと受け止めています。
御用聞き営業からの脱却
―マーケティングパートナーの一員として、どのような人材が求められるでしょうか。
渡辺
まず必要なのは「提案力」でしょう。昔はお客様に注文いただいた商品を言われるままに持っていく、いわゆる御用聞き営業でした。しかし、今は商品の種類が豊富なので、本当はもっと提案できる商品があるかもしれません。その出会いの可能性を広げるためには、こちらから「他にもこのような商品があります。機能はこうで、価格はこうです」と提案しなくてはいけません。
―提案力を高めるために、どのような人材育成をされていますか。
渡辺
まず最低限の商品知識は必要です。幅広い商品知識がなければ、お客様に「こちらのほうがいいですよ」と提案できませんから。
ただ、商品知識については十分とはいえません。取扱商材は100万点以上あり、全てを覚えるのは無理です。理想は管材、住宅設備、電材、どれも知っているマルチ営業マンですが、それは現実的ではないので、現在は業態別に組織を分けて、それぞれの専門性を高めるような研修などをしています。