CASE 1 楽天 能力と役割を分割 “楽天主義に基づく行動”を重視した 世界共通の評価制度
インターネット・サービスを提供する楽天のグローバル化施策といえば、「社内公用語英語化」や「多国籍な社員が働きやすい職場づくり」の印象が強い。
だが同社では、さらに一歩踏み込んで、全社員を対象に世界共通の人事考課制度を設けている。制度導入に向けて配慮したポイントなどを、担当者に聞いた。
● 背景「楽天主義」を評価する仕組み
ECサイトの「楽天市場」をはじめ、トラベルや金融サービス、電子書籍など、暮らしのあらゆるサービスとインターネットを結びつけ、新たなライフスタイルを提案し続ける楽天。
海外には約25の主要拠点があり、連結従業員数約1万3000人のうち、外国人社員は約5000人、楽天単体でも2割以上が外国人社員だ。グローバル人事部人事企画課課長の黒田真二氏は次のように語る。
「当社は2005年に海外進出をスタートしましたが、加速度的にグローバル化が進んだのは2010 年以降です。M&Aや合弁企業の立ち上げを中心に規模を拡大する中で、グループ共通の人事制度の確立は急務でした」
それぞれ独自の風土を持っていた企業が、グローバル化の流れの中でグループに参入することになる。したがって人事制度を構築するには、“楽天”という企業体としての意識や価値観の統一を図ることが求められたと、グローバル人事部人事企画課副課長の大前友香氏は説明する。
「グループ全体で人材の最適配置を行うことがグローバル人事制度の最終目的ですが、まずは当社が掲げる行動基準の『楽天主義』を理解し、それに基づいた行動を評価できる仕組みが必要だと判断したのです」
それは、どのような仕組みなのだろうか。
● 施策 能力と成果の2軸で評価する
同社では、2013年より新しい評価制度の運用を開始している。初めは楽天本体で導入し、以降、段階的にグループ各社へ広め、今は全社員を対象としている。“Global Grade”に基づくコンピテンシー(能力)評価と、パフォーマンス(成果)評価の2つの軸を設ける仕組みで、詳細は次の通りだ。
① コンピテンシー評価(Global Grade)
一般に職能資格と呼ばれるものと同様の制度であり、特定の職務に影響されない観点で社員の業務遂行能力を評価する。グレードは7段階に分かれ、下からB、BB、BBB……と続き、AAAの上に最高ランクのSがある。
楽天主義に掲げる「成功の5つのコンセプト」に関する11個のキーワード(図1)が評価項目のベースになっており、それらに適う行動や振る舞いができているかを見る。