人材教育最前線 プロフェッショナル編 人を強く、たくましく育てるのは 研修ではなくチャレンジという経験
都市ガスの供給をはじめ、電力の販売など、首都圏のエネルギーインフラを支える東京ガス。ガスや電気の安定供給の背景には、数々のシステムの稼働がある。そのシステム開発や管理を行うのが、東京ガスiネット(旧ティージー情報ネットワーク)である。
同社人財開発部門リーダーの工藤千温氏は、「研修だけでは人は育たない」と言い切る。入社当初はシステムエンジニアとして活躍し、システム管理現場での経験も豊富な工藤氏の発言の真意とは。同社の人財育成の方針も含め、話を聞いた。
組織の問題を横串で見る
東京ガスグループのシステム関連分野を一手に担う、東京ガスiネット。システムの開発から運用、保守までを手掛ける同社では、多くの社員がシステムエンジニア(SE)として活躍している。総務部人財開発グループマネージャーの工藤千温氏も、新卒で入社した当初はホストコンピューター稼働環境の導入や維持管理を担当していた。
「コンピューターのメンテナンスではシステムを停止する必要があるので、休日や夜間の作業が当たり前。部署に女性のSEが配属されたのは私が初めてでした」
本当に男性社員と同じ扱いで良いのか? と先輩が戸惑うほど、当時は珍しい存在だった。しかし、しばらくして工藤氏にも転機が訪れる。
「入社3年目に結婚し、その後二度の育児休暇を経て配属されたのは、現場から少し離れた運用系の企画部門。家庭との両立を考え、会社側が配慮してくれたのです」
だが、この仕事は平易なものではなかった。インターネットが普及し始め、ネットワークの在り方が急速に変化し始めた頃である。システム同士がつながり複雑化すると同時に、情報インフラがオープンな環境へとシフトチェンジする中、工藤氏はシステムの稼働安定性の向上に向けた活動に参画することになった。
「当時、開発したシステムのトラブルが相次ぎ、全社的な課題となっていました。改善に向けて委員会が立ち上がり、私は事務局として施策を推進することになりました」
工藤氏はこれをきっかけに、部署間の問題を横断的に捉え、全体像を把握する役割を担うようになる。
「ちょうどその頃、全社的な取り組みで人事の処遇制度や教育体系の見直しを図るワーキング活用が行われていました。私の職場は幕張のシステムセンターでしたが、幕張の仕事や人を知っているということで、本社で行われる意見交換の場によく呼ばれていました。思えば、この当時から今につながるような仕事をしていたのかもしれません」
本社の人財開発部門へ
2002 年頃から数年間、同社は分社化や再統合を行うなど、不安定な時期を迎える。その間工藤氏は、システムユーザーの問い合わせ先であるコールセンターのアウトソース化プロジェクトのリーダー、経営企画のグループでのマネージャー、さらに一度は分社した企業同士の再統合に向けたプロジェクトへの参画など、気づけば人材マネジメントに関わる業務に携わっていた。
「どの立場でも共通して考えていたことは、企業において社員がモチベーション高く成長し、同時に組織も成長する環境や仕組みを整えていくにはどうすれば良いのか、ということでした」