寺田佳子のまなまな 第5回 ガーデニング研究家 はたあきひろ氏に聞く 「感性を研ぎ澄ます 自然の暮らし」
自分で農作物を作って自分で食べる「自産自消」を実践しながら、ガーデニング研究家としても活躍する「はたあきひろ」さん。
幼少期から現在に至るまで、“カン”を大切に暮らしてきたという、はたさんの学びの神髄とは。寺田さんがググっと迫ります。
祖母からの贈り物
「ガーデニングを通じたコミュニティー創り」の第一人者として、奈良を拠点に、テレビ出演や執筆活動、講演、ワークショップ開催と大忙しの、「はたあきひろ」さん。身近な自然を暮らしに取り入れる楽しさ、植物を育てることで変わる人生の価値観を紹介する著作は、海外でも翻訳されるほどの人気だ。
そんなはたさんの野菜栽培ヒストリーは、小学校3年生の時に遡る。
5月のある日、お祖母さんが京都の北野天満宮の天神さん(縁日)で、ナスとトマトとキュウリの苗を買ってきてくれたのだ。
「これ、育ててごらん」
お祖母さんはそう言って、帰っていった。
はて、どうしたものか……。
普通の子どもなら、「どうしたらいいの?」と大人に聞くか、『野菜の育て方』の本を探すか、あるいはハナからあきらめるか、そんなところだろう。
ところが、はたさんは違った。
「ボクは落ち着きのない子でねぇ。ウチでおとなしく本読んでいるなんてありえへ~ん、っていう子だったんですよ(笑)」
だって、自然界には木や草や花や虫や鳥や、面白い生き物がたくさんいる。どんなに走り回ってもドキドキする新しい発見が尽きないのに、じっとしているなんて!
そんな思いに駆られる日々の中で、たくさんの生き物と接し、生命の不思議やたくましさ、そして儚さを、理屈ではなく感覚で学んでいたのだ。
どうすればイキイキするのか、何を与えればすくすく育ち、喜ぶのか、どんなことでしおれるのか、何をすると死んでしまうのか。
その「自然が教えてくれた生命とのつき合い方」に倣って、お祖母さんがくれた苗を優しく見守り、苗に秘められた「生きる力」をひたすら信じて手入れをしたら……。