人材教育 The Movie ~映画でわかる世界と人~ 第43回 『ペルセポリス』川西玲子氏 時事・映画評論家
「ペルセポリス」
2007年 フランス 監督:マルジャン・サトラピ、ヴァンサン・パロノー
2016年の1月、10年続いたイランに対する経済制裁が解除された。核開発を大幅に縮小することで、欧米諸国と合意したのである。この制裁解除を受けて、イランは積極的な経済外交を展開し、各国もこの資源大国に熱い視線を注いでいる。
1960年代以降、イランはパーレビ国王の独裁体制下で、中東有数の近代国家となり、日本との関係も良好だった。1973年には、イラン側と折半でイラン・ジャパン石油化学を設立。このプロジェクトは、1979年のホメイニ(イラン)革命でイスラム原理主義国家が誕生し、欧米との関係が悪化した後も、イラン・イラク戦争をくぐり抜けて、1981年に頓挫するまで続いた。そしてバブル期には、多くのイラン人が日本に出稼ぎにやってきた。
日本はその後も、官民一体でイランの石油開発を模索した。2004年には、世界最大級と言われるアザデガン油田の開発に着手。日産26万バーレルの生産量を見込んでいた。だがイランに核開発疑惑が持ち上がり、アメリカの強い要請で撤退せざるを得なくなった。
イランの近現代史は、石油権益を狙う欧米諸国との、駆け引きと癒着の歴史でもある。パーレビ国王は欧米諸国の支援を受けつつ、国内では独裁体制を敷いていた。世界を驚かせたホメイニ革命は、このような国の在り方に対する反発だったのである。