寺田佳子のまなまな 第4回 日本大学生産工学部創生デザイン学科 三井和男教授に聞く 「幸せなキモチの構造デザイン論」(後編)
今回の「まなまな」は、前回に引き続き、日本大学生産工学部創生デザイン学科の、三井和男先生です。
学生たちの興味と好奇心を掻き立て、学びへの関心を引き出すための三井先生の秘策に迫ります。
学ぶ面白さを教える
「いいなぁ~。こういう仕事がしたいなぁ~」
小学生の時、代々木にできたばかりのオリンピック競技場を見上げて、こうつぶやいた少年時代の三井教授。当時はイケイケ気分いっぱいの高度成長期である。ダイナミックな建築物に魅了され、モノづくりに憧れた子どもは珍しくなかったに違いない。
だが、彼がユニークだったのは、その夢に近づく過程だった。
就職を考えれば、建築ラッシュで引く手あまたの建築デザインの道に進むのが、堅実な選択だったろう。しかし、あえて選んだのは、「基礎である数学を学ぶこと」だった。
今、注目を集めるモノをつくることより、将来に役立つ新しいモノを追究するほうが面白い。そんな想いを胸に、遠回りにも見える道のりをたどったのが、その後の「変化の時代」で大いに役立つことになった。
「数学のようなソフトな学問をバックグラウンドに持っていたので、思いがけなくモノから情報へと研究対象を大きく変えることにも、柔軟に対応できたのです。この経験は自分にとって大きな財産になりました。だから学生にも、何か1つのモノをつくる技術をキッチリ身につけるより、いろんなものに興味を持って、好奇心旺盛にチャレンジするほうが将来の役に立つよ、って言っているんです。学生たちは、これからどんな世界に飛び込むか分からない。なのに1つのモノしか知らないと、それが通用する狭い世界でしか生きていけなくなる。変化の時代に置いてきぼりを食ってしまいますからね」
なるほど!
今ある“知識・技術を教える”のではなく、将来生まれる新しい“知識・技術の学び方を学ばせる”“新しいことを学ぶ面白さを学ばせる”ってことですね。変化のスピードがますます速くなる時代なのだから、それはとても大切なことに違いない。