おわりに 一貫した企業ビジョンとキャリアへの道筋が 若者の“チャレンジ精神”を生む
求めているのは“安心感”
現代の若者は、やる気がない。何を考えているのか分からない―職場の上司や先輩たちからは、そんな愚痴が聞こえてくる。しかし、今回取材を進めると、決してそんなことはない、まじめで志の高い若者の実態が見えてくる。ただ、成長が期待できない“そこそこ時代”とSNS等の進展に伴う情報化社会が、彼らを慎重に、臆病にしているだけなのだ。
時代の変化と共に、若者の価値観も大きく変わっている。もはや昇進・昇給といった一律の施策で彼らのモチベーションを上げることはできない。そのため、企業も組織も、上司や先輩も、若手社員の意欲を引き出す工夫をしなければならないのである。
JTBモチベーションズの菊入みゆき氏、大内亮氏(OPINION1、26ページ)はそのカギとなるのは「人間関係」だと話す。特に職場の上司との関係は重要で、「上司がいつも見ていてくれる」という安心感が、若手社員のやる気につながるという。
自分のロールモデルとなる上司や先輩の存在も意味を持つ。自分の目標までの道筋が明らかになることで、安心して現在の仕事に取り組むことができるからだ。本来「モチベーション」というのは、未来志向の概念なのである。
さらに、会社が向かう方向性やビジョンも明確にする必要がある。現代の若者は社会貢献への関心が高く、「誰かの役に立ちたい」という気持ちも強い。しかし、現実は目の前の仕事に追われるばかりで、自分の存在価値が分からなくなり、やる気が削がれるケースがあるからだ。