CASE 2 VOYAGE GROUP 「尖った空間」でカルチャーが際立つ 社員に「経営理念」を浸透させる 一貫性のある空間づくり
インターネット分野において事業開発を行うVOYAGE GROUPでは、お酒が飲める「AJITO」やストーリー性のある会議室など、社員の多様な働き方を支援するさまざまな空間を設けている。
何もないスペースに突如現れた「AJITO」はいかに社員に愛される空間になったのか。
その背景には、理念と空間をトータルに再設計するという同社の戦略があった。
● 背景 AJITOを利用される空間に
オフィスに足を踏み入れたとたん、まるで、都会の隠れ家バーのような異空間が目の前に現れる。これは“近未来の海賊の秘密基地”をモチーフに作られた同社のコミュニティ・スペース「AJITO」(アジト)。日中はミーティング、業務、休憩などに自由に使えるオープンスペースで、終業時刻の18 時半以降は、アルコール類も無料で飲める社内バーに変身する。貸し切り利用も可能で、部署の打ち上げ、社内サークルの会合、社外からも人を集めてのイベントや勉強会、そしてその後の懇親会など、活用法は多彩だ。もちろん貸し切りイベントが入っていない日は、社員が誰でも自由に利用できる。
AJITOがお目見えしたのは2007年10月。当時の様子を、広報・IR 室室長の江頭令子氏はこう話す。
「発端は、社内コミュニケーションを活発化させたい、という思いでした。社員が増えるにつれて、意思疎通が図りづらくなり、『社内調整します』というフレーズが流行語のようになっていました。そんな中、『ベンチャー企業なのに社内調整でビジネスのスピードが遅くなるのはおかしいよね』と疑問を持つ人たちが出てきたんです」
それを受けて、社内の組織風土向上委員会では「熱い議論がカジュアルにできる場を提供できないか」という声が上がり、「お酒が入ると話しやすくなるよね」、「ふらっと立ち寄れて、違う部署の社員とも気軽に話ができる場所を社内に作ろう」と盛り上がった。社内バー・プロジェクトを発足させ、デザインコンセプトを固め作り上げたのが「AJITO」だった。
しかし、「AJITO」は当初、オフィス空間に全く馴染んでいなかった。中心となってオフィスづくりを担ってきた取締役CCO(Chief Culture Offi cer)の青柳智士氏が入社したのは、「AJITO」ができた翌年。当時の「AJITO」の印象を話す。
「局所的にかっこいいものを作っただけという感じがしました。実際、オフィス全体の中で『AJITO』だけが浮いた存在になっていたんです。しかし、それではもったいない。ユニークな『AJITO』を会社の資産として生かしたいという思いから、まずは『AJITO』が違和感なく理念に沿う空間になれば、と経営理念自体を見直したんです」(青柳氏、以下同)
オフィスはただの「ハコ」にあらず、経営理念を体現する空間であるべき―青柳氏はそう強く訴える。
「オフィスは、社員にとってコミュニケーションやセレンディピティ(偶発的な出会い)、イノベーションが生まれる空間でなければならない。そのためには、オフィス空間単体ではなく、経営理念、そして人材の採用・育成・評価を含めてトータルに設計し、弊社ならではの世界観を創る必要があったのです。オフィスは経営理念を体現する空間であるべきですし、そんなオフィスならば、そこにいるだけで社員に理念が浸透するはずです」
● 経営理念 経営理念、採用基準も刷新
刷新された経営理念は、創業時からの想いである「SOUL」と8つの行動規範「CREED」の2本柱からなる。