めざせ☆経営型人事 書籍に学ぶビジネストレンド 第33回 「出世学」を考える
ビジネスのトレンドを知っておくことは、経営や人材を考えるビジネスパーソンにとって必須である。
本連載では、データバンクに勤め、1日1冊の読書を20年以上続けてきた情報のプロが、最新のビジネストレンドと、それを自分のものにするためのお薦めの書籍を紹介する。
近年、出世に対してあまり関心を示さないビジネスパーソンが増加しているという。確かに10年前、20年前と現在を比較すると、明らかに当時のほうが、同期や先輩、後輩社員といかに競争していくかで鎬しのぎを削っていたように感じる。
調査会社クロス・マーケティングが行った「若手社員の出世・昇進意識に関する調査※」(2015年8月発表)によれば、20代・30代のビジネスパーソンの約4割が「出世したい」と答えている。裏を返せば、約6割は出世を望んでいないということだ。
働き方のスタンスに関する調査は多く行われており、人事担当者はこれらの結果を目にすることが多いと思うが、出世志向を持つ人が減少しているのは事実なのだろう。
書籍の世界でも、一時その傾向が鮮明に見られた。例えば、2014年1月刊行の『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』(日野瑛太郎著/東洋経済新報社)。このタイトルに代表されるように、いわゆる「出世学」とは離れた位置づけの書籍が2013年~ 2014年にかけて店頭をにぎわせていた印象がある。(2015年以降は、出世を含め、働く意欲をかき立てる書籍が増えているように思われるが……。)
出世欲のある4割の若手社員の中から次代のエースを探すのか、6割の中に潜む光る人材を選別し、いかにその気にさせていくのか。人事担当者はプロスポーツのスカウト並みの選択眼が求められているのだ。
さて人事担当者が今後の時代感を知るうえで、また、自社社員を育成する観点からも知っておきたい出世関連本は以下に大別される。
①実際に出世を遂げたビジネスパーソンの自伝
②人材ビジネスに詳しい著者による本
③社内政治を取り上げた本