TOPIC 青山ビジネススクール(ABS)2015年度 第2回「青山MBAフォーラム」レポート 経営・人事戦略の両面から 日本企業の今後を考える
2015年3月、青山ビジネススクール(以下ABS)の教授陣の著書
『「日本型」戦略の変化:経営戦略と人事戦略の補完性から探る』が上梓された※。
これを受け7月、その内容の一部を企業人事や経営企画部門に情報公開すべく
開催されたのが、「ABS2015年度 第2回青山MBAフォーラム」である。
※須田敏子氏編著、東洋経済新報社
経営者と研究者が語る
当日は、LIXILグループ執行役副社長の八木洋介氏による講演と、ABS教授、澤田直宏氏・須田敏子氏のリレー講演という2部構成で行われた。かつてないグローバル競争に突入した日本企業の経営・人事戦略の変遷を、経営トップと研究者の双方の視点から語るという試みだ。日本企業を取り巻く状況と、求められる変革の形が整理された。当日の概要を見ていく。
【第1セッション】LIXIL グローバル時代へのチャレンジ
八木洋介氏 LIXILグループ執行役副社長 人事総務担当
2011年にトステム・INAX・新日軽・サンウエーブ・TOEXという、住まい関連の5つのブランドが1つになって生まれたのがLIXILグループだ。私の上司、藤森(社長)は2011年から、私自身は2012年に入社し、グローバル化を進めてきた。
2011年度の海外売上高は539億円だったが、今は4000億円以上である。組織としては、2011年当時はもっとドメスティックで英語ができない社員も多く、女性管理職比率も0.9%という状況だった。そうした状況を少しずつではなく“一気にグローバル化しよう”と、この4年でM&Aを中心に成長、拡大してきた。
これまで当社が行ってきたグローバル化(戦略)と、人事のチャレンジについて一部を紹介する。
●M&A
第一はM&Aだが、海外でいちからブランドをつくると時間がかかる。そのため当社は“米国のマーケットをつかむためには米国のブランドを使う”ことにしたのだ。
具体的には2009年に衛生陶器ブランド「アメリカンスタンダード」のアジア部門を買収(2013年には北米の「アメリカンスタンダードブランズ」も獲得)。また2011年は、伊の大手カーテンウォール(ビルの外壁)メーカーとして世界一のシェアを持つ「ペルマスティリーザ グループ」も子会社化した。2014年には欧州で最大規模を誇る独の水栓メーカー「グローエ グループ」を買収し、世界的なブランドを仲間に得た。
●グローバルチーム
同時にグローバルチームも立ち上げた。例えばLIXIL(単体)の取締役10名のうち、生え抜きは1名だけで、外国人の取締役が4名いる。2015年3月期実績で、海外売り上げが約4分の1のため、なかなかいいバランスである。
このことにも表れているように、当社は日本で生まれた会社だが、国籍に関係なく“できる人”を採用・登用する。
●共通のバリュー策定と プラットフォーム構築
さまざまな人と組織がシナジーを発揮するには、共通のバリューとプラットフォームが必要だ。そこで、事業運営の土台には「Diversity(多様性の尊重)」「Equal Opportunity(機会均等)」そして「Meritocracy(実力主義)」の3つのカルチャーを据えて、世界共通の「LIXILVALUES」も策定した(図1)。
実は統合前、LIXILは9つ、アメリカンスタンダードは5つ、ペルマスティリーザは7つ、グローエは5つの項目からなるバリューを定めて、それぞれ浸透活動に取り組んでいた。
統合にあたり、これらを生かす“ハイブリッド型のバリュー”案も出たが、グローエの社長の『我々は1つのLIXILになるのだから、バリューも1つにしよう』という言葉がきっかけになり、図1の英語のバリューにまとめた。
●組織変革