CASE 3 ANA(全日本空輸) 人の力で「勝てる」組織に 計画的育成と理念の浸透を図る 人事組織の連携強化
「人財」を最も重要な経営リソースと考えるANAでは、「人財戦略室」を設置し、新体制を打ち出した。
人事にかかわる3つの部署がつながったことで、人づくりの流れをメンバー全員で共有できるようになったという。
その背景、狙い、展望とは。
● 背景 “個の力”を引き出す必要性
日本の航空業界を牽引する、ANAグループ。その航空運送事業を担うANA(全日本空輸)では、従来の人事体制を見直し、この4月より「人財戦略室」を設置した。その理由を人事部ピープルチーム主席の大曲哲雄氏はこう語る。
「航空会社の実力は、“人の力”によって左右されます。旅客機などのハード面は、他社との差別化を図るうえで限界があります。だからこそ運航の安全と安心、品質面やサービス面といった、人がかかわるソフト面で勝負せざるを得ないのです」。
さらに、飛行機1機を飛ばすにも、パイロットや客室乗務員だけではなく、空港での乗客のアテンド、飛行計画などの運航管理、貨物運送、さらに整備など、多くの人々の力が必要だ。
それだけに、同社における最も重要な経営リソースは“人財”に他ならない、と大曲氏は強調する。
今回の設置のもうひとつの理由が、今年1月、ANAホールディングスが発表した中期経営計画の見直しと今後の展望だ。
国際線事業の拡大を核に、2025 年までにグループ全体の売上高を、今の1.4倍※1に当たるおよそ2.5兆円まで伸ばすという。人財戦略の面では、ダイバーシティ&インクルージョンを推進すると同時に、グローバルマーケットで乗客に選ばれる航空会社になるためには、より複雑化、高度化する業務に対応できる人財の獲得が必要になる。
「今後は社員一人ひとりの“個”の力を引き出すことが欠かせません。今まで以上に課題を掘り下げて考える力や、イノベーションを起こす力が必要となるでしょう。そのためにも、人や組織に関係する部署の強化と連携が必要になると判断し、人財戦略室の設置に至りました。
新たな部署の誕生により、『“人の力”で勝ち抜く』というグループの決意は、社員に伝わったことと思います」(大曲氏)
※ 1 2015 年3 月31 日現在の連結売上高をもとに算出。
● 体制 人財3部署の連携強化
「人財戦略室」は、次の3つの部署を擁する。
①人事部……異動配置などの人事業務に加え、人事制度設計・運用や人財戦略全般を担う
②ANA人財大学……ANA社員採用と、ANAグループ全体の研修制度の企画・実施