CASE 2 ソフトバンク 「人」と「事業」をつなぐ人事 経営や事業と“伴走”しながら 現場の声をすくい上げる
変化の激しい通信業界において、スピーディーな事業展開を行うソフトバンク。
挑戦する人に公平なチャンスを与える風土はどのようにして生まれたのか。
人事部門の位置づけ・役割や、戦略実現のための人材開発施策、その背景にある考え方などを取材した。
● 人事の位置づけ・役割 「人」と「事業」をつなぐ
「情報革命で人々を幸せに」の経営理念のもと、移動通信事業をはじめ、さまざまな事業を展開するソフトバンクグループ※1。2010 年、創業30年を迎えた同グループは、次の30年の方向性を定めた「新30年ビジョン」を発表。今後30年で「世界の人々から最も必要とされる企業」をめざすことを示した。
「このビジョンを実現するために、人事は何をしていかなければいけないのか、毎年人事部門の部長クラス約10人が合宿で議論し、人事のめざす姿を模索しています」
こう話すのは、グループの中核をなす事業会社、ソフトバンク※2 の人事総務統括人事本部本部長、長崎健一氏だ。具体的には、人事が30 年後にめざす姿(Next30)として、「グループ5000 社、2万人の経営者」「世界一ワクワクする会社づくり」を定めている。
「新30 年ビジョンの中で、グループ会社を5000 社規模に拡大することを打ち出しています。各社に役員が4人いるとすれば、2万人の経営者が必要になります。また、世界でナンバーワンになる会社なら、働く社員が世界一ワクワクできる会社であるべきだと考え、この2つの目標を掲げました。さらに、これらを実現するために、人事が10年後にめざす姿(Next10)として『後継者・経営者人材が豊富』『グローバル人材が豊富』『勝ち続けるための組織・人材構成』『変革・挑戦・進化し続ける風土』の4つを掲げています」
もともと、ソフトバンクにおける人事のミッションは、ソフトバンクグループの人事担当役員の青野史寛氏がソフトバンクに入社した2005 年当時から、次のように位置づけられてきた。
「『人』と『事業』をつなぎ、成長し続ける会社をリードすること。これが人事の不変のミッションだと我々は捉えています。新たな事業を始めたり、事業を成長させたりするには、戦略的な人や組織の開発が不可欠です。人事は、常に経営や事業に遅れることなく伴走し、人や組織の観点から先手を打って提案していく姿勢を持ち続けることが重要だと考えています」
※ 1 ※ 2 2015 年7 月、持株会社ソフトバンクはソフトバンクグループに、事業会社ソフトバンクモバイルはソフトバンクにそれぞれ社名を変更した。
● 人事ポリシー 戦略実現のための3つの柱
人事がめざす姿の実現に向け、ソフトバンクではさまざまな人事施策を展開している。長崎氏によれば、それらの幹・軸となる部分を整理すると、次の3つの人事ポリシーに集約されるという。
①「勝ち続ける組織」の実現
新30 年ビジョンの中で、ソフトバンクグループ代表の孫正義氏は、「最低300 年続くグループのDNAを設計する」と述べている。300年続く企業になるためには、勝ち続ける組織を実現しなければならない。大企業病(=成長が止まり停滞する、組織がよどむ)に陥ることなく、常にベンチャーマインドを持ち続け、全員が変化を楽しみ、ワクワクしながら目標に向かって進む。そんな活力溢れる組織を追求し続ける。