OPINION3 トップを支えるだけでは不十分 「ビジネスパートナー」という もう1つの戦略人事
ビジネスの最前線に立つ人々を支える仕事は、戦略人事の要と言っていい。
人事がトップや現場のパートナーとなるにはどんな心構えとスキルが必要なのか。
コンサルタントとして、人事と共に戦略人事を展開する村上剛氏に聞いた。
部門に貢献するという使命
─戦略人事を実践するため、人事は本来、どのような役割、責任を持つべきなのでしょうか。
村上
戦略人事は、全社の成長戦略や各事業のビジネス戦略の立案と実行支援に、人と組織の両面からかかわります。経営者や現場のラインマネジャー、社員に対し、主体的に働きかけてサービスとソリューションを提供し、人と組織のパフォーマンスを最大化する役割を担います(図1)。同時に、採用、配置、育成、報酬などの人材フローの決定に大きな影響力を持ち、そこから生み出されるビジネスの結果に責任を持ちます。
外資系企業では、人事の中に、各部門のビジネスに貢献する「ビジネスパートナー」という役割が確立されています。彼らは人事部門の立場から、ライン部門のビジネスゴールの達成に向け支援を行います。具体的には、部門の業績レビューミーティングへの参加、タレント・マネジメントの実施(26ページを参照)、サクセッションプラン(後継者育成計画)の作成などです。
日本企業にも部門人事を配置している会社がありますが、どちらかと言うと受身的で、部門の戦略や部門長の指示に対し事務的な業務を行うことが中心のようです。
─なぜ、日本企業には外資系企業のようなビジネスパートナーが生まれにくいのでしょうか。
村上
理由のひとつとして、外資系企業と日本企業における、採用や配置、評価などの人事権の違いがあります。外資系企業では人事権はライン部門にあるのが一般的です。人事部門には人材マネジメントに関する意思決定に対し、HR(Human Resource)の専門家としてアドバイスが求められます。
一方、日本企業は伝統的に本社の人事部門が人事権を持つ傾向があります。ライン部門に対してビジネスパートナーとしての役割を担うという発想はあまりないようですね。
しかし、最近はビジネス環境の変化に対応するため、日本企業でもビジネスの最前線にあるライン部門への貢献が求められつつあります。
また、これまで日本企業の人事は、業績責任については負っていないか、負うとしてもごく一部という場合がほとんどでした。自分たちの裁量の余地があまりない、というのがその理由です。今後、かかわり方が変われば、業績に対する責任も重くなるでしょう。