OPINION1 起点は「事業戦略」 日米双方のよさを活かす ハイブリッド型戦略人事のすすめ
現代は変化の激しい時代――言い尽くされた表現ではあるが、誰も異論を唱えることはないだろう。
そんな今、人事の「あるべき姿」が問われている。
「戦略パートナーとしての人事」への転換が求められているのだ。
とはいえ、戦略人事をいち早く提唱した米国を一概に真似ればよいわけではない。
日本の人事が変えるべきもの、活かすべきものとは。
戦略パートナーの役割
そもそも「戦略パートナーとしての人事」が話題となったのは、1997年。ミシガン大学のデイビッド・ウルリッチ教授がその著書『MBAの人材戦略』で「人事の4つの役割」を提唱したのがきっかけだ。以下、その概略を簡単に説明しよう。
【人事の4つの役割】
①経営戦略の達成を人材の側面から支援する「戦略パートナー」
②組織や風土の変革を進める「変革エージェント」
③人事の日常業務やデータ管理を行う「管理エキスパート」
④従業員の声を聞きサポートする「従業員チャンピオン」
③、④、つまり管理・労務は日本企業の人事が以前から担ってきた役割である。しかし、競争が激化する時代、特に①の「戦略パートナー」としての貢献が不可欠だ。人事部がいかに戦略の実現に貢献できるかという意味で「デリバラブル(何をもたらすか)」が問われる米国企業では、戦略人事が重要なカギとなっている。
タレント・マネジメントとは
米国の人事が戦略パートナーとして進歩したのは、「タレント・マネジメント」という手法が広がったことが大きい。具体的には、
「組織の持続的競争優位に貢献する重要なポジション(キーポジション)を特定」→「高い潜在能力を持ち高業績を上げる人材のタレントプールを開発」→「キーポジションにふさわしい人材をタレントプールから充足できる仕組みを構築」→「有能な人材が組織に継続的にコミットできる体制を整備」という一連の戦略人事システムを指す※1。その際ポイントとなるのは
・キーポジションの抽出
・必要な人材像と要件(コンピテンシー)の明確化