ID designer Yoshikoが行く 第99回 ビリギャルと福澤諭吉と 学習科学の三角関係
ようこそ慶應義塾大へ
「今、甦れ!独立自尊の精神」
スクリーンの中央にこの1行が大きく映し出されると、教室に詰め掛けた100 名を超える人々が一斉にどよめいた。その熱気はまるでアイドルの出番を待つコンサート会場のようである。
やや趣を異にするのは、期待に顔を紅潮させている聴衆の大半がティーンエイジャーではなくナイスミドルで、その間にちらほら大学生らしき若者の姿があることだ。
「独立自尊」といえば、我が母校・慶應義塾大学の創立者、福澤諭吉先生の言葉である。「ん、同窓会?」と勘違いしそうな雰囲気の中、次にアップになったのが、
「さやかが慶應とか、チョーウケるわ!!」と、屈託なく笑いながらピースをする、金髪&ヘソ出しファッションの女子高生。あぁ、もしここに諭吉先生がいらしたら、たぶん目が点になって、「ガン見し過ぎじゃね?」と言われるに違いない、このポーズ。そう、今年上半期の大ヒット映画『ビリギャル』のワンシーンである。
『ビリギャル』、正しくは『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(KADOKAWA アスキー・メディアワークス)は、書籍が累計発行部数100万部突破、映画の観客動員数は200万人を超え、今や社会現象にもなっている実話に基づいたストーリーだ。ヒロインの工藤さやかのめざした大学が慶應ということで、これはぜひとも同書の原作者、坪田信貴さんをお招きして直々にお話を聞かずばなるまい、と同窓の面々が張り切ったのである。