CASE 1 アイリスオーヤマ 公正さと成長支援のために 経営課題とリンクした基準で順位を出し、処遇にも反映
アイリスオーヤマでは、パート社員を含めた全従業員に360度評価を実施。
結果を項目別に順位づけして本人と上司にフィードバックしたり、昇格・降格等、処遇にも利用したりなど、徹底的に運用している。
その目的や評価方法、今後の課題とは。
● 背景 「永遠の存続をめざす」経営
収納用品やペット用品、さらに近年はLED照明事業や食品分野への展開にも力を入れるアイリスオーヤマ。多種多様な商品を広く生活者に届けられる背景には、商品の開発・生産機能と小売店などへの流通機能を、工場に集約した「メーカーベンダー」という独自のビジネスモデルにある。
事業の進め方もユニークといえる。年間1000点もの新商品開発と、製造までの仕組みはその一例だ。
商品開発の始まりは、毎週月曜日に、大山健太郎社長の前で行われるプレゼン会議。毎回平均60 件もの提案があり、その場で商品化の可否が決裁される。一度商品化が決まれば、企画、生産、営業が連携しながら一斉に動き出す。決裁から2カ月という短期間のうちに、販売にこぎ着ける。
さらに、大連の自社工場のラインの稼働率は、常に7割に抑えられている。残りの3割を空けておくことで、緊急のニーズにも対応できるようにするためだ。
挑戦的にも思える戦略や仕組みの背景には、同社の企業理念「会社の目的は永遠に存続すること」がある。
今売れている定番商品を守り、マイナーチェンジを繰り返しながら販売し続けても、やがて飽きられたり価格競争に巻き込まれたりするものだ。たとえ開発経費がかかり、予備の生産ライン確保のために稼働率が下がっても、そのつど求められている新商品を出し続ければ、それが売り上げを支え、次なる定番商品にもなっていく。同社は、企業理念の「永遠に存続」を実現するためにこそ、常に新商品の開発に注力している。
● 求める人材像 変化対応力を重視
このような独自のスピード経営を支えていくうえで、同社はどのような人材を求め、育成しているのか。人事部統括マネージャーの倉茂基一氏は、中でも「変化対応力」を重視すると説明する。
「例えば、今年度の新人採用の広報キーワードは『それでいいのか─いま、その気づきをチャンスに。─』でした。常に現状に対する疑問を持ち続け、変化を恐れずに行動できる力を持つ人を求めています。数合わせの採用ではなく、こうした理念をしっかりと理解し共感してもらえる人たちを、少数精鋭でもいいので採用したいと考えています」(倉茂氏、以下同)
変化対応力が必要なのは、当然ながら新人だけではない。必然的に人材採用や育成、さらには評価のあり方やフィードバックの方法なども、こうした経営の方向性とリンクして変遷していくことになる。
● 経緯 360度評価導入と試行錯誤
変遷の結果、現在同社のリーダー(主任・係長クラス)以上の評価・処遇は、
①360度評価による順位
②1年の成果をプレゼンする研修による順位の2つをもとに、人事評価委員会により決められている。なお、360度評価はパート社員を含めた全社員に行われている。
まず360度評価を取り入れた理由や経緯を追っていこう。