OPINION3 効果を最大限に高める 上司→部下へのフィードバック9つの関係性と11の要素とは
繁桝江里氏や桝本智子氏等々、国内外の先行研究から、職場におけるフィードバックは人材の力を高める有効な手段のひとつであり、特に上司はその重要な提供者だと指摘されている。
そこで、「上司―部下間の関係性」と「上司のフィードバック方法」の2つに焦点を当てて調査を行った人事コンサルタントの永國幹生氏が、フィードバックを行ううえでの注意点について寄稿する。
実施した2つの調査研究
一般的に、人は、上司や他者からよいところを指摘される“ポジティブフィードバック”を受けると、自分の言動が支持されていると認識し、その言動を継続、促進する。一方、悪いところを指摘される“ネガティブフィードバック”を受けると、行動を抑制したり修正を行ったりすると考えられている。
しかし、上司が単にそれらのフィードバック(以下FB)を行えばよいのかというと、そうではない。効果的なFBは部下の意欲や成長を促進するが、そうでない場合は負の影響を及ぼすと考えられる。
このような問題意識に基づき私は、2014 年、FBの効果を高める要因について調べる機会を得た。これまでの研究からFBの効果には「上司─部下間の関係性」、および「上司のFB方法」の主に2つの側面が影響することがわかっている。これらを合わせた1つのアンケート調査を行い、その結果をそれぞれの視点で検討することにした(調査概要は図1)※。
※この結果の詳細は、筆者が立教大学大学院ビジネスデザイン研究科での研究としてまとめた論文『上司のフィードバックについての研究』を参照のこと。ここではそのダイジェストを掲載する。
●調査研究1 上司─部下間の関係性による影響
調査研究1では、1つめの側面─「どのような上司─部下間の関係性がFBの効果に影響を及ぼすのか」について、調査協力者の回答を因子分析や重回帰分析などの統計的手法を用いて検討した。結果、以下の9点が明らかになった(図2)。
(1)普段から上司のサポートを感じている部下ほど、ネガティブFBを肯定的に捉える
上司からの支援を日頃受けていると感じている部下は、ネガティブFBを“有益な情報”として認識すると思われる。また、「上司のサポート」については、他の要素と比べてもFB 効果への強い影響が見られた。
(2)上司の能力・実績を高く評価している部下ほど、その上司からポジティブFBを求める
能力・実績の高い上司からのポジティブFBは、部下の成長欲求や承認欲求を満たすことにつながると思われる。
仕事の専門能力やリーダーとしてのマネジメント能力を高め、実績を出すことが、部下への影響力を高める一法になるだろう。