人材教育 The Movie ~映画でわかる世界と人~ 第35回 「めぐり逢わせのお弁当」川西玲子氏 時事・映画評論家
「めぐり逢わせのお弁当」
2013年 インド 監督:リテーシュ・バトラ
中高年の映画ファンはインド映画といえば、1966年に日本で公開された『大地のうた』をはじめとする、サタジット・レイの「オプー三部作」を思い浮かべるだろう。これを観た日本人は、インドの近代史を背景にした内容の深さと、圧倒的な映像美に驚いた。
その後、インド映画は一度、日本人の視野から消えた。次に注目されるのは約30年後の1998年、『ムトゥ 踊るマハラジャ』が公開された頃だ。「オプー三部作」しか知らなかった日本人は、歌って踊るのがインド映画の“普通”なのだと初めて知った。
そして最近、3度目の波が来ている。2013年に公開された『きっと、うまくいく』から、インド映画の歌って踊るイメージを覆す、人間ドラマを描く作品が人気を呼ぶようになったのである。「インドがこういう映画をつくるのか」という、新鮮な驚きも手伝って、今や世界的な評判を呼んでいる。いわばインド・ニューウェーブだ。