Column1 学ぶ意欲とオープンな心 「マインドフル」な人との出会いがグローバル人材を育む
世界で活躍するビジネスパーソンに共通する、重要な資質がある。
「マインドフルであること」だ。
「多様な他者」と対峙し、コミュニケーション能力をフルに発揮するために不可欠な心構えという。
若手グローバル人材を育成するうえで、その模範となるべきまず中高年層が身につけておくべきマインドセットについて、船川淳志氏が語った。
MBAよりMB2Aが必要
私は企業研修や公開セミナーの参加者、コンサル案件で関与する人たち以外にも、仕事柄いろいろな方に会う。最近も、友人を介して、ある方に都内のホテルでのパワーブレックファーストをお願いした。国際基督教大学で行われた「TED※×ICU」 での彼のスピーチに感銘を受けたからだ。
大学在学中、ノーベル賞受賞で有名なムハマド・ユヌス氏が創設したグラミン銀行に飛び込み、バングラデシュでNPOを立ち上げ、その後、グーグルに入社した。彼の名前は三好大助。ネットで検索すると、その多方面での活躍ぶりがうかがえる。
お互い初対面。お会いしたその瞬間、私はひと目で、「合格! 凄い!」と判断した。ちなみに、昨今では私のこの一文だけ捉えて、「上から目線」と批判する野暮な人が年代に関係なく増えてきた。
私の意図はそんな話ではない。彼と私は、お互いの年齢差なんか関係なく、いろいろな話題で話が盛り上がった。ビュッフェテーブルから食べ物を取る暇すら惜しいと思われるほど、あっという間に2時間以上が過ぎた。
社会貢献を喧伝する知識人、著名人(むろん、コンサルタントも含めて)に会ってみると「がっかり」という人は少なくない。笑っているようでも目が笑っていない、あるいは生き生きとしていないのだ。表向きの仮面なのか、あるいは虚勢を張っているのか。よく観察すると、その理由が見えてくる。
日欧の橋渡し役として30年以上の実績を持つ今北純一氏も、このことを指摘されていた。「ナルシストたちは表情が暗いのでよくわかりますよ」と教えていただいた。それもそのはず。彼らにとっては、使命や目標よりも、「名前を売ること」「目立つこと」のほうが優先的だ。そして、社会貢献することで他者よりも優位に立ちたいという意識を抱いている。このように承認欲求が肥大化しているから、「残念な人」になってしまうのだろう。三好さんはその逆で、使命や目標を決して見失っていなかった。
かつて、ビジネススクールの講師を20年間近くやっていた私は、MBAよりMB2A、つまりMindful Brave & Bold Action(マインドフルで、勇気を持ち、大胆な行動をとること)の実践を強調している。MBAの授業で学ぶ知識は、もはやネットで身につけられる時代だからだ。
ここで言うマインドフルとは、いろいろなことに好奇心を持ち、一期一会を大事にし、自らの心的状況にも注意を払いながら、その場に応じた最適の行動ができる状態を指す。言い換えればラーニングフル(learningful)な状態であり、オープンマインド(openminded)であることだ(図1)。
ビジネスセンスや思考力、英語も含めたコミュニケーション能力、多文化の理解、リベラルアーツなど、グローバル人材が学ぶべきことは多い。スポーツも学問もビジネススキルも、「できた」と思った瞬間、成長が止まる。だからこそ、グローバル人材は、人生の最後の日まで学び続けていけるかが問われる。