OPINION3 ポイントは事前の準備と“遊び” アジアに駐在させる前に可能なメンタル・サポート具体策
早期にグローバル人材として育成した人を、いざ長期に海外派遣させる際に注意すべき問題の1つが、メンタルヘルスである。
昨今では特にアジア地域や中国に派遣される人が、うつ病などにかかりやすいと言われる。
果たして問題の所在はどこにあり、人事ができるサポートは。
日米中の企業と企業人に詳しい専門家が、その要因や提言を語る。
若いうちにすべき海外経験
先日、教鞭を執っている早稲田大学で「将来、海外で働きたいか」と尋ねてみた。驚いたことに、希望者はおよそ半数しかいなかった。私の学生時代は、ほぼ全員が海外に憧れたものだが…… 。
人、モノ、カネとあらゆるものがグローバル規模で動く時代になった。好むと好まざるとに関わらず、これからの企業人はグローバルに通用するスキルと資質を持たねばならない。
大企業や官公庁はもちろん、中小企業でもグローバル化を意識して、スキルや語学、コミュニケーションの研修を積極的に行っているが、それらは文字通りの研修で、私に言わせるといささか“遊び心”に欠けている(詳細は後述)。
日米のグローバル企業で働き、中国の複数の大学で客員教授を務めたことから言えば、海外経験は若いうちに積むほうが有益だ。そして、内向きな若手を海外に誘うには、学びよりも前にまず“楽しさ”を伝えなければならない。「大変でしんどいけれど、すごく楽しい。そしてキミにも会社の成長にも有益なんだ」─そういったメッセージが求められる。
メンタルタフネス>語学
最近の若い人や企業の若手社員は、なぜ海外経験を積むことに慎重なのか。例えば、中国における日本人駐在員のうつ病リスクは、国内の実に3倍に及ぶ。心の不安定さからか、飲酒量も飛躍的に増えるという(MDnet調べ)。このような現実を社内外で見聞きするにつけ、「旅行で海外に行くのはよいが、仕事は国内で」と考える若手が増えているのかもしれない。
これも経験から言えば、海外に出て最も必要なのは、語学力でも本業のスキルでもなく、精神的なタフさだ。アジアの労働者たちは、日本人と比べれば「報・連・相」をないがしろにしがちだ。また、納期に間に合わないことを前日まで告げないといった人もいる。そうした考えや姿勢の違いを持つ彼らと交流していくのは、確かに一筋縄ではいかない。
日常生活でも、衣食住にまつわる衛生面の問題や、帯同した家族が現地になじめるか等の問題があり、公私にわたってさまざまなストレスにさらされることになる。海外駐在で最も必要なもの─それは強靭なメンタルなのだ。
地域で異なるメンタル問題
先述の通り、海外駐在時のメンタルヘルスは大きな問題だ。とはいえ派遣地域によっても傾向が異なる(図1)。