人材教育 The Movie ~映画でわかる世界と人~ 第33回 「リトル・ダンサー」川西玲子氏 時事・映画評論家
「リトル・ダンサー」
2000年 イギリス 監督:スティーヴン・ダルドリー
○家族愛だけではない
『リトル・ダンサー』は、イングランド北部の、さびれつつある炭鉱町から、少年がバレエダンサーをめざして飛翔していく物語である。2000年に公開されて世界中でヒットした。作品の質に対する評価も高く、演出家出身のスティーヴン・ダルドリー監督は第1作目にして、アカデミー賞の候補にもなった。
爽やかで感動的なラストが素晴らしい。そのためか、少年の夢を支える家族の愛と感動の物語だという印象がある。最近はどんなドラマや映画も、そういう括りで宣伝される。家族の愛と感動の物語は確かに、誰にでも受け入れられる普遍的なテーマだ。だがそれを強調し過ぎると、作品に対する見方が一面的になって、他の要素が抜け落ちてしまう。
実際、監督は『リトル・ダンサー』のテーマを、「共同体の再生」だと語っている。私はそこに感動した。当時、まだ40歳になるかどうかという若さだった監督が、ニューレイバー政策を推進するブレア政権下で、サッチャー政権時代に炭鉱町で何が起きていたかを描いたのである。