人材教育最前線 プロフェッショナル編 人を育てる〝チャレンジ〞と 組織を変革する〝バリューの浸透〞
「チャレンジの創出」「メンバーのコミットメント」「バリュー(行動規範)の浸透」を自身の人材育成の要とする、グリー 人事本部 人材開発部 シニアマネージャーの中石匡彦氏。常に「率先垂範」と「尊重」をモットーに行動しながら、業績向上に向け、社員のチャレンジの質・量を拡大する仕組みづくりや、グリーが掲げるミッション・ビジョン・バリューを浸透させる施策に参画してきた。そんな中石氏を支えているのは、「事業の成長に貢献する組織・人材・カルチャーの創造」に全力を捧げる、という熱い想いである。
チャレンジの質と量を高める
「業績向上に向けて、社員が持つクリエイティビティを最大限引き出すことが重要な経営課題の1つだと、私は考えています。我々は石油などの資源を持っている会社ではなく、社員がサービスを企画・開発する会社ですから、社員の継続的な成長が不可欠なのです」
こう語るのは、グリー 人事本部 人材開発部 シニアマネージャーの中石匡彦氏である。
社員の成長はチャレンジの質と量に比例する、という考えのもと、チャレンジする機会を増やすための仕組みとして「メンバーとの定期的な1 on 1(上司と部下の1対1での面談)」を今年の4月から全社で実施している。
グリーの設立は2004 年。ベンチャーとしてスタートした当初は、誰かに指示されずとも自主的に動き、自ら成長するために主体的に学ぶ社員が占めていた。加えて人数が少ないため、一人ひとりがポジションにとらわれず多様な業務をこなし、冒険的な、大胆な仕事にチャレンジする機会も多かった。
だがその後、急速に業績を伸ばす中で社員数は拡大。人が増えるにつれ、組織という形がより明確に出来上がり、仕事は分業化された。組織別の業務分掌や職位別の期待役割などが定義される中で、社員のチャレンジの質・量も、それらの定義に応じたものになっていった。
「社員一人ひとりのコンディション把握のため、昨年人事が全社員と面談を行いました。その中で明らかになったのは、背伸びをするような仕事、チャレンジができていない社員が相当数いるという事実です」
人は、チャレンジを通じて成長するものだ。中石氏を始め人材開発部ではこの状況を変えるべく、自分たちを含め一部の部署で実施していたメンバーとの定期的な1 on 1を、全社的に導入していった。
「メンバーに仕事を通じたチャレンジの機会を与えるのは上長です。そのためまずは上長が、(1 on 1のような対話を通して)メンバーのコンディションを把握することが重要だと思います」
だが、会社が社員に求める役割や仕事と、社員が期待するものとが必ずしも一致しない事態に直面することがある。そんな時こそ、メンバーと真摯に向き合いチャレンジすべき目標について合意し、メンバーのコミットメントを引き出すことが重要になる。それこそが「マネジメントに求められる役割」だと中石氏は語る。
バリューに即した行動を共有
チャレンジの質と量のコントロールと同様に、社員の育成において重要なのがバリュー(行動規範)の浸透である。