CASE 3 ネスレ日本 さまざまな経験を積んだ学生との接点を増やす エントリーのタイミングを「選べる」採用の仕組み
2011年に新卒採用の手法を見直し、いわゆる「一括採用」とは異なるシステムを構築したネスレ日本。
イノベーションの創出につながる多様な人材の獲得に向け、採用と教育の機会を両立させたインターンシップを実現している。
開発者の森本氏に話を聞いた。
● 背景 採用システムを全面的に変更
「ネスレ日本では2010 年に社長が交代しました。これを契機に、従来の採用制度を抜本的に見直したのが現制度の原点ですね」
当時、採用担当だった森本正樹氏は、システム変更の経緯をこのように振り返る。
ネスレ社はスイスに本部を置く世界的規模の食品飲料企業。グループ全体の売上高は約10兆6300億円に上る(2014 年)。以前は外国人が日本法人の社長を務めてきた。
「2010年11月、日本法人の生え抜きとして初めて高岡浩三が社長となりました。当社はマーケティングを経営の根幹に据えており、高岡も同部門の出身者です。社長就任に伴い、製品開発はもとより、組織運営から人事採用まで全てをマーケティングの視点から、ゼロベースで検討するよう指示を出しました。採用活動についてもイノベーションを起こせる人材確保を目的として、全面的に見直すこととなったのです」
それまでの同社の採用活動は、スケジュール、プロセス共にごく一般的なものだった。
具体的にはエントリーシートの提出に始まり、SPIなど適性テストによって志願者を絞り込む。そのうえでグループディスカッションを行い、3度の面接により採用者を決める。各社横並びのタイミングに揃える方が、就活に臨む学生にとってもやりやすいと考えていたからだ。
しかし、自社が求める人材の発掘と学生にとってのメリットを考えた際、今の採用方法がベストではないと判断し、2011年から採用プロセスを全面的に変更した。
● 具体策1 ネスレパスコース
まず採用選考に4つのエントリーコースを設けた。全職種対象のネスレパスコースと、技術系職選考コース、エンジニア職を対象とするサマーインターンシップコース、工場職選考コースの4つである。
中でも特徴的なのが、「ネスレパスコース」だ(図1)。
このコースでは、内定までに4つのステップを踏み、インターンシップの要素が盛り込まれたプログラムとなっている。