OPINION4 大学教育と仕事の接続点を 実務経験を積ませる海外のインターンシップに学ぶ
人材育成に投資できる資源は限られているが、即戦力につながる優秀な人材の確保はいよいよ難しくなっている。
ところが、新卒採用のスタイルは、高度経済成長期の頃とさほど変わっていない。
この矛盾点を突くのが、東京大学大学院 本田由紀氏だ。
従来の採用のあり方をどのように見直すべきなのか。
インターンシップは解決策となるのか。ヒントを聞いた。
短期的目線では効果生まない
―大学3年の3月という就活解禁までに、いかに学生との接点を増やし、8月以降の選考活動を効率的に進めるか。採用ルール改正に際し、企業はさまざまな試行錯誤を強いられているのではないでしょうか。
本田
バブル期に流行ったリクルーター制度を復活させたり、特定の大学をターゲットに説明会を開いたりするような、ある意味、時代が逆行したかのような動きも加速していますね。そんな中、特に最近、目立った変化として表れているのがインターンシップを活用する企業の増加です。
採用時期が後ろ倒しになった空白期間を使って、秋季や冬季にインターンシップを行うケースも増えています。私が教鞭を執る大学でも、昨年12月は、3年の授業の出席率が減少するような、例年とは異なる傾向も見られました。
こうした現状を鑑みるに、早くも今回の改革が骨抜き状態であることが露呈されているわけですが、そもそも旧来の新卒採用が抱える問題点が是正されないまま、インターンシップの量的拡大が起こっているとしたら、それは今回の改正が生んだ新たな問題ではないでしょうか。
日本の新卒採用が抱える本当の課題は、時期を数カ月後ろ倒しにするような小手先の改革で解消されるものではなく、もっと根深いところにあります。
―どのような課題があるのでしょうか。
本田
大きく3つあります。1つめが、卒業までに内定を獲得しなければ、就職が極めて不利になるという時間的制約。2つめが、大学在学中の比較的早期に採用が決まるため、教育の成果が重視されないこと。3つめとして、採用基準や採用後の職務内容・条件が明確でないことが挙げられます。
我が国で、大学新卒者の約3 割以上が3年以内に離職するという状況が一向に是正されないのも、こうした問題点が放置されていることに根本的な要因があります。これらに目を逸らしたままルールを変えたり、インターンシップを実施したりしても、就活がはらむ問題の打破は難しいと言わざるをえません。
―インターンシップを課題解決に役立てるには。
本田
企業側の姿勢が問われます。採用の成否が、ランクの高い大学からの採用人数や内定辞退者をいかに出さず“歩留まり”を高めるかといった面で評価され、そのツールとしてインターンシップが行われているとしたら、むしろ逆効果を生んでいるといってもいいでしょう。その分、時間を奪われる学生が増えるわけですから。
結局、中長期的に見れば、企業にとってもインターンシップで得られる成果ははなはだ乏しいという残念な結果に終わりかねません。