特集 企業と学生が共に輝く インターンシップの可能性
採用活動が大きく後ろ倒しされる――
「2016年問題」で、採用方針、スケジュールは変更を余儀なくされている。
就職支援サイト登場以来ともいわれる、この最大の変化に企業はどう対応すればいいのか。
注目されているのがインターンシップである。
企業によってさまざまな立場、捉え方があり、決してひとくくりにはできないインターンシップ。
しかし、「仕事のリアル」を学生に知ってもらうことで、従来の採用活動・就活におけるミスマッチを解消することはできるのではないか。
また、学生たちの職業意識を育む取り組みは、新卒人材の質の向上に結びつく。
そこで次ページからは採用活動の歴史をひもとき、インターンシップの大きな流れについて見てみることにしよう。
採用の歴史を振り返る
採用活動の歴史は大きく2つの時代に分けられる。潮目は1995 年。就職支援サイトが登場した年だ。『人事部は見ている。』(日本経済新聞出版社)の著者であり、大企業で採用責任者を務めた経験のある楠木新氏は、「この年を境に、就職活動はクローズドなものから、誰でも好きな会社に応募できるオープンなものに変わった」と振り返る。時代が変わったことで何が起きたのか。
上の図を見てほしい。“クローズド”の時代では、選考活動の期間はせいぜい1~ 2カ月程度。というのも当時、企業側の学生へのアプローチはリクルーター活動が中心だった。採用実績のある大学の学生に個別に声をかける。あらかじめ母集団を絞り込んでいたため、「試験もせず、面接だけで選考する企業も少なくなかった」(楠木氏)という。ところが、1995 年以降、ネットによる応募者が増えると、母集団は急激に拡大する。1人100社以上もの会社にプレエントリーすることもあって、学生たちの応募先企業への関心度、理解度は必ずしも高くない。適性、能力レベルもさまざまだ。そこで企業は、エントリーシートや適性検査、能力テストなども加え応募者を絞り込むようになった。その後は面接を中心に選考を行う。とはいえ内定者確定の作業は卒業年次の10月1日までに終えねばならず、採用スケジュールは過密なものとなった。さらに、1997年、経団連が倫理憲章を制定。2012年には、広報活動開始日は12月1日、選考開始日は4月1日に定められた。正式内定者決定の10月1日まで6カ月。内定辞退があれば、追加で内定を出さねばならないことを考えると、十分な期間とはいえないのが実情だった。
学生との早期接触を図る試み
そして、2016 年の新卒採用である。経団連の採用選考に関する指針に基づいた、卒業前年の3月に採用広報開始、8月に選考開始の予定による採用活動がスタートした。実質的な採用活動の期間は8 ~ 9月の2カ月間だ。
しかし、この指針の拘束力はないので、経団連未加盟の企業を中心に、独自のスケジュールで採用を進めているところも少なくない。そのため、採用の「後ろ倒し」が生じているのは一部の企業に限られる。実際は、通年でどこかの企業が採用活動を行っているという状況といえる(図2)。そうした中、企業側は採用とは別の機会に学生との接触を図る動きが見られる。業界や仕事の理解を深める活動を通じて、学生や大学との関係を強めたり自社の認知度を高めたりするのが狙いだという。その手段として多くの企業が注目しているのが、インターンシップである(図3)。