めざせ☆経営型人事 書籍に学ぶビジネストレンド 第27回 「時代の変化」を読み解く
ビジネスのトレンドを知っておくことは、経営や人材を考えるビジネスパーソンにとって必須である。本連載では、データバンクに勤め、1日1冊の読書を20年以上続けてきた、情報のプロが最新のビジネストレンドと、それを自分のものにするためのお薦めの書籍を紹介する。
2015年1月に発表された「経営者コンピテンシーに関するアンケート」の調査結果は非常に興味深い内容であった※。その中に 「これからの『理想の経営者』に求められる資質」という設問がある。その結果によると、経営者に求められる資質は、従来までの「統率力」「強烈な意志」「人心掌握力」から、「イノベーションの気概」「変化への柔軟性」「過去からの脱却」へと転換していることがわかったという。なお「本質を見抜く力」は、引き続き高い支持を得ている。この「本質を見抜き、変化に対応できる」ことは企業や人にとって大きなテーマだ。
経営者の資質が変化しているということは、当然、役員から新入社員に至るまで、求められる人材のキャラクターも変化していると考えるべきだろう。実際、業種業界問わず、各社の人事担当者と話していると、例えば新人を採用する時にも「変化に柔軟に対応できそうな人材」が望まれている傾向を鮮明に感じる。
本連載で私はこれまで、人事担当者は時代の変化に敏感になり、先を見通す癖をつけていくべき、という持論を展開してきたが、ここへ来てその意を強くした。会社を支える大切な人材を見極め、育てるために、人事担当者こそ、これまで以上に時代の変化や人に対し、“目が肥えている”必要があるのだ。
これからの時代、業界全体の再編や業態を変化させる企業の増加等、今まで経験したことがないような世の中の変化がより訪れることになるだろう。そんな時代に、いや、いつの時代も、時代を読み解くヒントは、書籍の発刊傾向が実はそっと教えてくれる。
先の経営者の調査結果とその傾向を照らし合わせれば、イノベーション関連書籍の勢いがとどまるところを知らないのはよく理解できる。また骨太の経営論よりも、それこそ時流を読み、いかにして難局を乗り越えたか、どう発想し行動したかという「柔軟性」について書かれた本が明らかにトレンドだ( もっとも、こういう時代こそ骨太の経営論を読んでおきたいもの。よって本連載でも骨太特集を近いうちにお届けする予定)。
さて人事担当者が読んでおきたい、今後の時代の変化を読み解くための書籍は大きく2種に大別される。①人事・人材事情に詳しい著者の本②時代の流れにフォーカスしている本
①については、就活ジャーナリストから人事責任者の著書に至るまで、読んでおきたい書籍が目白押しである。
②はこれからの人材活用を変化させる可能性があるキーワードを常にイメージしておくことが重要である。イノベーション、AI(人工知能)、ビッグデータなどはその好例であろう。