論壇1 ~カギは「発揮すると活力の出る強み」~ 強みで高い成果をつくり出す時代の到来
社員一人ひとりの弱みを克服するよりも、強みを活かしたほうが早く高い成果を上げられることは認知されてきた。しかし、実際に社員一人ひとりの強みを活かしている組織はまだ多くないように見受けられる。そこで、強みを活かした個人・強みを活かした組織についてのポジティブ心理学者の考察、強みに対する考え方、その視点と応用について、事例も含めて解説を試みたい。一人ひとりがイキイキと働き、高い生産性を上げる組織づくりに、「強み」は重要な推進力になるのである。
なぜ、「強み」が重要なのか
スポーツの競技を思い起こしてほしい。たとえば水泳。自由形・平泳ぎ・背泳・バタフライの4種があるが、あなたはどの競技に出場するだろうか。バタフライが得意ならバタフライ競技に参加するだろうし、得意でない種目に好んで参加することはあるまい。ボクシングも柔道も同じ。自分が最も得意な技で戦いに臨むのが、競技の世界では当たり前である。では、企業はどう戦うのだろうか。弱みを克服してオールラウンドに戦うのか?それとも、強みを活かし、そこに集中して戦うのだろうか?ピーター・ドラッカーは、強みで戦うことを提唱した。多くの企業が「選択と集中」を合言葉に、強みである事業にリソースを集中してきた。強みに集中したほうが、より高い成果を上げられることが経験的にわかっていったからである。そして、ドラッカーが強みについて強調して語っているのは事業だけではない。組織の一人ひとりの強みについても、さまざまな本で繰り返し述べている。
●成果をあげるためには利用できる限りの強み、すなわち同僚の強み、上司の強み、自分自身の強みを使わねばならない。
●強みこそが機会である。強みを活かすことが組織の特有の目的である。
●人間それぞれが持っている弱みを克服することはできない。しかし、組織は人の弱みを意味ないものにしてくれる。
(P.F.ドラッカー『(新訳)経営者の条件』1995年 ダイヤモンド社 P.96
皆さんの会社では、社員一人ひとりが、自分の強みを意識して戦っているだろうか。それとも弱みを克服することに力を入れているだろうか。いや、その前に、強みを自覚しているだろうか。意識はしていたとしても、実際に強みを発揮しているだろうか。本当に強みを意識した働き方を取り入れている企業はまだ多くないだろう。
ポジティブ心理学者の強み研究
ポジティブ心理学という学問がある。誰もがWell-being――「より良い生き方」をするために、心理学を役立てようという科学的な研究だ。そして、ポジティブ心理学では「強み」の研究が盛んに行われている。
強みを使う効果
強みを発揮して仕事をすると、どのようなことが起きるのだろうか?英国のポジティブ心理学者であるアレックス・リンレイをはじめ、何人ものポジティブ心理学者が調査した。その結果、強みを発揮すると、次のような効果があることがわかった。
●目標を達成しやすい