酒井穣のちょっぴり経営学 第10回 ファイナンス2 企業は資金をこう調達する!
前回は「ファイナンス1」として、会計とファイナンスの違い、そして「未来のお金を考える」というファイナンスの基本について確認し、その計算方法についても詳しく紹介した。今回は具体的に、企業の中のファイナンス活動――資金調達の仕方について追ってみていく。
前回は、「会計」と「ファイナンス」の違いを説明し、お金の時間的価値(Time Value of Money)という概念について考えました。具体的には、「ファイナンス」は、過去のお金について考える「会計」とは異なり、未来のお金を考えるところに特徴があることについて触れました。今回はもっと具体的に、企業におけるファイナンスの活動について見て行きます。
ファイナンスと企業の成長
企業経営においては、経営者は、絶えまない企業価値の向上を狙っていきます。そのために、通常の経営では「いついつの時点で、どれぐらいの売上・利益規模になっている」という目標(予算)を立てます。これは将来のお金を考えることですから、こうした行為は当然、ファイナンスの範疇になります。経営者は、この目標を達成するためには、どういったことに、いくらのお金を投資すべきなのかを考えます。この時、投資に使えるお金が多ければ多いほどよいのですが、そうしたお金の調達にはコストがかかります(=資金調達コスト)。それらは具体的には、銀行からお金を借りる時の金利や、会社の株を買ってくれた株主に支払う配当金だったりします。ですから、投資に使うお金を自腹で出すのではなく「調達」する場合は、コストを抑える必要があるため、めいっぱい調達すれば良いというものではありません。必要な投資資金を、必要なタイミングで、最も安く調達するのが賢い経営なのです。企業はどのタイミングで、どのような資金調達の方法をすべきか、ということについては『企業ファイナンス入門講座』(保田隆明/著、ダイヤモンド社)という本の中で詳細に述べられています。この本の内容をベースに、以下、説明をしていきます。図表1を見てください。まず、設立後まもない企業は一般に倒産確率が高いため、銀行から「この会社にお金を貸しても大丈夫だ」という信用が得られないのが普通です。そこで資金調達は、リスクを取って大きな儲けを狙うベンチャー・キャピタル(VC)やエンジェルと呼ばれる個人投資家から行うことになります。運よくこの投資が成功し、企業価値が高まれば、銀行からの信頼が得られる段階に成長するでしょう。
個人の借金と企業の借金の違いは?
ところで、銀行から個人が借金する場合と、企業(法人)が借金する場合の違いをご存じでしょうか?これは意外と知らない人が多いのですが、とても重要なポイントです。