インストラクショナルデザイナーがゆく 第42回 顧客の幸せのために幸せな社員が運ぶ靴
その素敵な会社のことを初めて知ったのは、ニューヨーク・ブルックリンのパークスロープにある友人宅に行った時のことである。
引っ越し祝いパーティーの真っ最中に、「DeliveringHappiness(幸せをお届けします)」と書かれた大きな段ボールが届いたのだ。
「わぉ、見せて!」
「今度は、なに買ったの?」あっという間に段ボールは開けられ、中からいくつもの靴が現れた。『アレクサンダー・マックイーン』の過激なグラディエーター・サンダルあり、『ナイチンゲール』のピンクのふわふわスリッパあり、『ジュゼッペ・ザノッティ』の宝石をちりばめたようなハイヒールあり。
会社ではそこそこ重要なポストを担うおばさま数人が、夢中になって、「これは絶対買い!」とか、「デザインはいいけどちょっと窮屈ねぇ」と、寄ってたかっていいたい放題する様は、映画『セックス・アンド・ザ・シティ(SATC)』の主人公キャリーたちが靴選びをしている光景そのままだ。
「こ、こんなに買って、大変じゃない、かな?」
端っこで1人ハラハラする私はそっちのけ。あれこれ試し履きをしたあげく、10 足ほどあった靴の中から2足を選ぶと、あとはさっさと箱にしまって、返却用のラベルをペタッと貼って騒ぎは一段落。
「心配しないで!
送料も無料、返品も無料なのよ、ザッポスは!」