JMAM 通信教育優秀企業賞 表彰企業事例報告 アヲハタ 上司や先輩の率先垂範が自ら学ぶ連鎖をつくる
食品加工メーカーのアヲハタも、「JMAM 通信教育優秀企業賞」を受賞した7社のうちの1社である。
若手社員の能力開発への取り組みを目標管理の評価項目にしたり、経営方針に連動した推奨講座を設定するなど、自己啓発への取り組みに熱心である。しかし、同社の自己啓発の一番の特徴は、長年培われてきた「学びの連鎖」である。
ミカン缶詰製造からジャムメーカーへの転身
広島県中南部、竹原市。緑豊かな山々と穏やかな瀬戸内海に囲まれたのどかな町に、アヲハタ株式会社はある。温暖な気候を活かして、古くからミカンをはじめとする柑橘類の生産が盛んなこの地に、ミカン缶詰のメーカー、「株式会社旗道園」として創業したのは1932 年。ちなみに、創始者の中島董一郎氏は、キユーピーの創業者でもある。
戦時中、事業を一時中止した同社が、「青旗缶詰株式会社」として再スタートを切ったのは1948 年。以来、高度成長の波に乗り、業績を伸ばしてきた。しかし、1985 年のプラザ合意以降、円高により海外の低価格品との価格競争が激化、缶詰産業は、構造不況に陥ってしまった。
こうした状況を受け、同社は1988年、創立40 周年を機に、社名を「アヲハタ株式会社」に変更するとともに「脱缶詰」を掲げ、創業以来培われたフルーツ加工技術を活かせる新しい事業分野の開拓に乗り出した。その結果、家庭用の瓶詰めジャム、調理用ソース、業務用のフルーツ加工品を事業の柱とする食品加工メーカーに見事、転身を果たした。中でもジャム事業は、国内の家庭用瓶詰ジャム市場で、市場占有率50%を誇るまでに成長、“ジャムといえばアヲハタ”というブランドイメージを確立した。
社員の6割が通信教育を受講
そんなアヲハタが、自己啓発支援の一環として通信教育を導入したのは1982 年。以来、28 年間継続して実施しており、今や通信教育は、同社の教育制度の柱となっている。同社の自己啓発通信教育制度でまず目立つ点は「参加率が高い」こと。正社員約400 人のうち、約60%が受講している。
制度は導入したものの、申込はわずかという企業も少なくない中、社員の半数以上が受講しているというのは、自己啓発制度が人材育成の基盤として機能している証拠だ。しかも、「毎年、募集ガイドを配布すると、“今年は何を受けようか”と社員同士で相談し合う様子が社内のあちこちで見られる」(人事・労務グループ チーフ 松浦氏)というように、教育部門が積極的に働きかけなくても、通信教育を受講することが当然のような雰囲気が社内にあるという。
もう1つの特徴は、89.7%という「修了率の高さ」である。
一般的に、自己啓発の場合、通信教育の修了には受講者の学習意欲の維持が必要だ。そのため、多くの企業で修了率の向上に腐心している。特に資格取得など難度の高い講座については修了率は低くなりがちだ。その点で、同社では受講者の約9割が修了するというこの数字は特筆すべきといえよう。
しかも、単に受講しているだけではない。通信教育で勉強して資格を取得する社員も多く、食品製造業には欠かせない「品質管理」「殺菌技術」「衛生管理」などを中心に毎年、50 ~ 60 人が資格を取得しているという。さらに、「社会保険労務士」「行政書士」「通関士」といった難関資格を取得した社員も少なくない。