JMAM 通信教育優秀企業賞 表彰企業事例報告 日本通運 “他己啓発”から始まる自ら学ぶ職場づくり
通信教育を人材育成に活用し、自ら学ぶ風土を醸成している企業に対し授与される「JMAM 通信教育優秀企業賞」。
物流業界をリードする日本通運は、階層別教育・自己啓発の双方で通信教育を活用。
集合研修との連動や、通年での受講受付などの独自の試みを行い、学びへの気づきを1人でも多くの従業員が得られるよう促す取り組みによって受賞に至った。
物流の原点に立ち返る自律型人材の育成
世界37 カ国、211 都市に382 拠点を持ち、独自の物流情報システムとノウハウで物流業界トップの実績を持つ日本通運。同社では創立70周年を迎えた2007 年より、人材育成体系の大幅な見直しを行ってきた。かねてから階層別研修と通信教育をブレンドして育成に活用してきた同社だが、今回、改めて通信教育を教育体系に組み込み、さらなる展開を図っている。
その背景には、近年の経営環境の変化に伴い、必要な物を必要な時に届けるという新たな戦略的管理システムのあり方が求められていることがある。高度化した物流システムをグローバルに展開するためには、それに対応できる人材の育成が必須であるとして、2010 年4 月、内部組織として『NITTSU グループユニバーシティ』(以下NGU)を設立。現在は、グループ全体としての教育体制の刷新・構築を推進している。
NGU の次長、池内研二氏は同社の人材育成について次のように語る。「日本国内に限らず広くグローバルに市場が拡大している中で、付加価値を生み出し、お客様のニーズに応え、信頼される存在であり続けることが私たちの使命。それには自律した個人の発想力や提案力、そしてやり抜く実行力が求められており、自律型人材の育成を方針に掲げて取り組みを推進してきました」(池内氏)
またこうした動きについて、「ある意味原点回帰だと思っているんです」と語るのは、同じくNGU 立ち上げメンバーの川口弘之氏だ。「もともと物流という仕事は、単に物を運ぶだけではない。たとえばおばあちゃんが孫のためにプレゼントを送る時、届けたいのは気持ちそのものです。物流の新たな潮流もありますが、その原点は人であり、人材は物流業にとって唯一の経営資源といっても過言ではありません。この原点に立ち返り、人材育成の各種施策を講じています」(川口氏)
経営計画と人材育成を結ぶ教育を求めて
さらに2010 年度より、同社は3カ年の中期経営計画として、「グローバルロジスティクス企業としての成長」「戦略的環境経営の推進」「経営基盤の強化」「CSR 経営の推進」という4 つの基本戦略を掲げている。「これまでの教育訓練計画は、単年度で完結するものがほとんどでした。しかし経営計画の実現には、人材育成との連携が不可欠。この経営計画と連動した長期的な教育訓練計画を構築し、推進していくのがNGU の大きな役目です」(池内氏)
この4つの基本戦略に基づいて教育訓練計画へと具体的に落とし込んでいった形が、階層別研修や部門別研修、通信教育を含めたNGU の人材育成フレームである(図表1)。
NGU の土台となるのが、ネット・キャンパスを含めた各地のキャンパス。2010 年5 月には、メインキャンパスである人財開発センター「NEX-TEC 芝浦」が竣工した。
これを土台として「ビジネスリーダーの育成」と「プロフェッショナル・スペシャリストの育成」の二本柱の教育方針を掲げ、具体的には、新入社員研修を皮切りに、各階層別研修や部門別研修を行っている。
これらの集合研修だけではなく、各階層に応じた通信教育を適宜組み入れて、効果的に活用していることが、今回同社の『通信教育優秀企業賞』受賞につながった(図表2)。
通信教育制度は一般的に、階層別・部門別教育を目的としたものと、自己啓発を目的としたものの2種類に大別されるが、そのうち階層別・部門別教育目的の通信教育は、受講を昇格の要件としていたり、一部必修とするなど、制度化されていることが多い。