人材教育最前線 プロフェッショナル編 最も重要な教育は人格を形成し、高めること
「あなたと、コンビに」でお馴染みのファミリーマート。今年9 月14日には、50 ~ 65 歳の“おとな”向けの商品やサービス開発などを目的とした「おとなコンビニ研究所」を発足。社会貢献など、大人の生活を提案すると言う。このように次々と新しいアイデアを打ち出し、激化するコンビニ業界の競争を勝ち残る――そのために必要な人材とは何か。今年4 月、管理本部総務人事部人財開発グループマネジャーに就いた小林桂氏は、「人格」が最も重要だと語る。ファミリーマートが求める人財像を、人格に価値を置き、明確にした氏に、教育に対する想いを聞いた。
必要なことは自分で考えて動く
全都道府県に店舗を構える大手コンビニエンスストア、ファミリーマート。今年4 月、同社の管理本部総務人事部人財開発グループに小林桂氏が着任した。
小林氏は1994 年に同社に入社。コンビニエンスストア業界を志望した理由をこう話した。「父が駅ビルや商業施設の開発の仕事をしていた影響で、小売業の魅力に引き込まれていきました。大学の卒業論文のテーマも『コンビニ業界の展望』。その時から、当時はまだ実現されていなかった行政と連携したサービスなどを考えていました」
大好きなコンビニエンスストア業界で、開発の仕事に携わるという理想を抱いての入社だった。だが、店長業務の後の配属先は、開発ではなくスーパーバイザー(以下、SV)。
SV とは、各店舗の売り上げなどのデータをもとに店舗の改善提案や経営指導する、いわば店舗経営の経営コンサルタントである。時には父親以上の世代の店舗オーナーに対して経営指導をしなければならず、苦労が多かったという。
しかし、一方でやりがいを実感できる仕事でもあった。そのため本社へ異動を命じられた時は、がっかりしたと小林氏は語る。もっとも、本社への異動には理由があった。
当時同社には海外研修論文制度があり、これに選ばれた小林氏の論文での提言を、本社で全社展開してもらいたいというのである。「論文には、加盟店の売り上げ向上のためには、SV はオーナーの生活の裏側まで知って、経営指導をすべきだと記しました。子どもがいるのであれば、年間の教育費がいくら必要か。そのためには利益、売り上げはいくらでなくてはならないのかをデータで示し、SV がきめ細かいアドバイスすべきというものです」
小林氏は、論文での提言を実現するために、直営店の管理を手掛ける一方で、SV の開店指導マニュアルを作成した。
小林氏が本社へ異動になった1998 年は、ファミリーマートの筆頭株主が西友から伊藤忠商事グループへ変わるという大きな変化があった年でもある。その影響もあり、翌1999 年に立ち上がったのが、業務改善プロジェクト「フェニックス委員会」だった。そこで、小林氏は「店舗オペレーションの改善」と「SVの業務環境の整備」の2つの分科会の事務局を兼任した。
メンバーは30 代後半から40 代。27 歳の小林氏にとっては、先輩方の経験や現場の現状を知る貴重な場となった。同時に、仕事への向き合い方について考えさせられることもあったという。「本社の指示がなくても必要なことは自分から率先して行動すればいい。私はSV 時代から、そう考えてデータを作成し、店舗指導を行ってきました。ですがプロジェクトの議論では、本社の指示が必要という意見も多く、驚きました」