ベンチャー列伝 第22回 市場価値の高い人材は挑戦と支援によって育つ
顧客企業の抱える課題を解決するのが、アウトソーシング事業を担うエスプールのミッション。人材育成を同社のコア・コンピタンスと位置付け、柔軟な人事制度を設けたり、新規事業へのチャレンジを可能にする施策を講じるなど、社員の能力向上支援を充実させている。
プロ集団によるアウトソーシング事業
1999 年に創業されたエスプールは、人材派遣事業をはじめとして、物流、セールスプロモーションなどのアウトソーシングを請け負い、事業を拡大してきた。そもそもなぜアウトソーシングを手掛けるようになったのか。創業者である代表取締役会長兼社長の浦上壮平氏はこう語る。
「エスプールを創業した頃は就職氷河期で、大学を出ても就職できない人たちが多くいました。私が当時勤めていた家庭教師派遣会社でも、アルバイトとして在籍していた優秀な学生がフリーターになり、その後も仕事にモチベーションを持てず、フラストレーションを溜めてしまうという状況に直面してきました。彼らがやりがいを感じ、成長できる仕事を与えたいと思ったのが設立理由の1 つです」(浦上氏、以下同)
そう考えて行き着いた事業がアウトソーシングだった。アウトソーシングには、大きく分けて2 つの形態がある。1 つは、専門特化したプロ集団を形成し、顧客企業が必要とする機能を提供すること。創業当時の主力事業である人材派遣業はそれに当たる。派遣は、“雇用リスクのアウトソーシング”といえるもの。企業にとって人を雇用する責任は重く、社会保険の加入、福利厚生費といった諸々の手続きなども発生する。それを同社が一手に引き受ければ、顧客企業の負担は軽減されることになる。
2つめは、多くの会社が共通で行っている作業を、集約して代行することで、企業のコスト削減を実現するもの。たとえば近年同社で大きく成長している物流アウトソーシング業務がその一例だ。インターネット通販や販売促進キャンペーンなどで、企業が個人に荷物を送る機会が急増したものの、大々的な物流システム投資ができなかったり、物流コストを削減したいという企業も多い。そこでエスプールが物流倉庫を保有し、物流システムを導入して、発送代行業務をはじめとした一連の物流業務を数十社から受託し、一括管理する。数十社の発送をまとめて管理することで配送会社と料金交渉できるようになるなど、スケールメリットによって顧客に低コストで高付加価値なサービスを提供できる。
「いずれにせよ、当社が扱っている業態は、そもそもプロの人材を集めにくいニッチな分野です。だからこそ、当社が人材を教育してノウハウを確立し、プロ集団をつくることが、お客様の課題解決に直結します。そのため、創業当初から人材を当社のコア・コンピタンスとして、育成に力を入れてきました」
帰属意識を高め将来への希望を生む
通常“派遣”というと、時間給でしか評価されず、責任もさほど重くないといったイメージがある。しかし同社では、スタッフのスキルを適正に評価し、派遣やアルバイトからの社員登用を積極的に推進してきた。
「アウトソーシングの現場では、経験があり、臨機応変に現場を仕切れる人が重宝されます。そうした人を活かすため、現場でスキルを積み重ねてきた人に、社員になってもらうようにしました」
また、派遣スタッフの評価方法にも同社の特徴がある。