TOPIC 「アトリエMALL」プロジェクトレポート 越境アクションラーニングで得られる学びとは ~若手ビジネスパーソンたちの挑戦 <前編>~
中原淳氏(東京大学准教授)が代表理事を務める一般社団法人 経営学習研究所(MALL)は2014年、異なる組織に所属する若手企業人が体験を通して学べる機会として、越境型アクションラーニング・プロジェクト「アトリエMALL」を
立ち上げ、約半年にわたり実施した。
そのプロジェクトでは何が起き、何が彼ら彼女らの学びとなったのか――2号にわたってレポートする。
「学びの場づくり」を学ぶ
志ある若手ビジネスパーソン集まれ!異業種越境型プロジェクト「アトリエMALL」始動!「あなた」がラーニングイベントをデザインしてみませんか?
2014年7月、アトリエMALLは、経営学習研究所(以下MALL)の代表理事である中原淳氏(東京大学准教授)のこんな呼びかけからスタートしたプロジェクトである。MALLとは2011年に「これからの人材育成を面白くする」ことを目的に、研究者、実務家の理事8名によって設立された団体だ。設立以来、人材育成に関する数々の実験的なイベントを企画・実施してきた。
2014年は、若手企業人が体験を通して学べる機会として、「さまざまな企業に所属する参加者が会社の枠を『越境』し、人材育成イベントの企画・実施を通して『学びの場づくり』を学ぶ越境型アクションラーニングプロジェクトとして『アトリエMALL』」を企画したのだ。
募集対象は25歳以上39歳以下のビジネスパーソン。8月のキックオフミーティングの後、2チームに分かれ、チームごとにイベントを企画。11月21日と26日にそれぞれイベントを自主開催することをめざした。
プロジェクトに応募するには、1000字程度で応募動機をまとめる必要があった。多数の応募者から選ばれたのは精鋭13名だ。
この越境プロジェクトは何を生み出し、彼ら彼女らはどんなことで何を学んだのだろうか。今号では、イベント開催日までの様子・概要を時系列に紹介する。
【キックオフ】8月6日
19時、アトリエ・メンバーに選ばれた13名がいよいよ顔を合わす。メンバーの所属企業はIT企業、金融、メーカー、広告代理店……とさまざまだ。職種は人事や人材育成部門の人が多いものの、そうでない人もおり、多彩な顔ぶれである。
まずはじめに理事の田中潤氏(ぐるなび執行役員)から趣旨が説明される。「MALLの設立趣旨は、単にイベントの開催ではなく、学びの輪を広げること。皆さんと面白いことを企画して、学びの輪が広がっていくことを期待したい」と話した。続いて、同じく理事の長岡健氏(法政大学教授)は、以下のようにエールを送った。
「この取り組みにはあまり制約がない。しかし、“何をやってもいい自由”というのは、実は“何も決められない不安”と隣り合わせでもある。企業人にとってそれを、組織を離れて考えられるのは貴重な機会。ぜひ、越境しているからこその、予定調和的でないイベントを企画してください」
初めてのミーティング
その後13名は、予め分けられたAチーム6名、Bチーム7名に分かれ、チームごとのミーティングへ。それぞれのやり方で、早速プロジェクトが始まった。
Aチームは、自己紹介を交えながらも、勤務地や自宅の場所、ライフスタイル、集まりやすい曜日や場所、SNSの利用状況など、打ち合わせや連絡の方法などを中心に話を進めた。てきぱきと実務的な雰囲気である。職場も働く時間もライフスタイルも何もかも違うメンバーと、どのように進めていくかを話しながら、互いの理解を深めようとしていた。