おわりに 既成概念から脱却し新しいリーダーシップを育てる
リーダーシップのパラダイムシフトが起きている。
かつてはメンバーの力を引き出すリーダーシップが欠けていても、組織はそれなりに機能していた。日本人は総じて責任感が強いこともあり、安定した環境下では自分の役割を認識し、きちんと仕事をこなすことができたのだ。
「組織に長がいれば、それでリーダーシップが存在していると信じられてきた」
OPINION1 髙橋潔氏の言葉は印象的だ。
だが、グローバル化や技術革新などで変化のスピードが速まり、あらゆる商品、サービスに高付加価値が求められる今日はそうはいかない。複雑化するゲームに勝つにはさまざまなリーダーの活躍が求められる。
メンバーの心をつかみ、チームをひとつにまとめるチームリーダー。試合の流れをうまく運び、勝利を呼び込むゲームリーダー。ビジョンや先見性を掲げるイメージリーダー。そして、育成を手がけるドリルリーダー。
時代が求めているのは、多様なアプローチによってチームを成功に導く、多様なリーダーたちだ。
「同じタイプのリーダーが金太郎飴のようにいる組織より、多種多様なタイプのリーダーがいるダイバーシティが進んだ組織のほうが、環境変化に強い」と語るのは、OPINION2の榎本英剛氏である。同氏は「もはや地位や権力で人を動かす時代ではない」とも話す。組織がフラット化し、自律した働き方が不可欠な今日では、地位や役職にかかわりなく、あらゆる人が現場でリーダーシップを発揮すべきだ。また、周囲をぐいぐい引っ張るカリスマ型のリーダーのもとでは、指示や命令によって強制的に動かされるメンバーは受け身になってしまい、自主性を発揮できなくなる。必要なのは求心力。魅力によってメンバーの心をつかみ、それぞれの力を引き出すリーダーシップが求められている