CASE.2 東京海上日動火災保険 育てる側と育つ側が共に成長するために 育成名人の「次世代リーダーを生み出す仕組み」
保険事業は「People’s Business」であり、お客様からの信用と信頼を得るために「Good Company」を目指す。
そうした会社を実現していこうと、「日本で一番『人』が育つ会社」を中期経営計画に盛り込んだ。人づくり強化の方針を打ち出す中で、リーダー育成にどう取り組んでいるのか。
● 経営方針で謳う大前提 「日本で一番『人』が育つ会社」
保険事業は「People’s Business」と呼ばれる。提供する商品、サービスは無形であり、人と人の間に築かれる信用・信頼が全てだからだ。東京海上日動火災保険でも、商品の価値を高めるために、社員の「人間力」が極めて重要だと考えている。
「目に見えない『損害サービス』を提供する当社は、『お客様のいざという時にお役に立つ』ことを存在意義としています。目指すのは、『何かあった時、真っ先に相談したい』とお客様が思ってくださるような『Good Company』。ですから、活力に溢れる主体的な人材、高い専門性を持ち、尊敬に値する人材を常に必要としています」(本田淳氏、以下同)
こうした人材を育成することを、同社は経営の核として位置づけている。2015 年4月からスタートする新中期経営計画のビジョンは「お客様に“あんしん”をお届けし、選ばれ、成長し続ける会社~ 100年後も良い会社“GoodCompany”を目指して~」。その土台となるのが「日本で一番『人』が育つ会社を目指す」という方針だ。中期経営計画の1ページに人材育成方針を盛り込んだ例は同社の歴史でも初めて、と本田氏。本気で人材育成に取り組もう、という決意が見て取れる。
「日本で一番『人』が育つ会社」の実現に向け、ベースとしているのは東京海上グループの5つの精神だ。「社会貢献(世のため、人のため)」「お客様志向」「チャレンジ精神」「グローバル・多様な視点」「自由闊達」といった同社の精神を、まず全社員で共有する。
グローバル規模で事業を展開している同社にとって、グループの精神を共有することはこれまで以上に重要になりつつある。そのため、研修やコミュニケーション誌、ブランド・ブック等のツールを使ってグループの精神を伝え、土台を固める取り組みが進められている。
そのうえで取り組んでいるのが「育つ側」と「育てる側」が共に成長する「永続的な成長スパイラル」の形成だ。
●「 育てる側」に向けた研修 リーダーシップ伝承の仕組み
同社が「育てる側」の育成に注力している背景には、社会環境やビジネスが変化し、かつての経験則だけでは部下育成が難しくなってきているという現状がある。例えば、以前はいわゆる“飲みニケーション”と称する勤務時間外での交流で部下指導が行われることも多かった。だが、今日では社員全員が一定の時間の中で成果を出すことが求められており、上司にも“時間内”で“正しい教え方”をすることが求められている。そのため、上司の側の育成能力やスキルの向上は欠かせない。
社員のダイバーシティが進み、多様な働き方をより尊重するようになったことも大きい。子育てや親の介護による短時間勤務の部下、年上の部下等も増加する中で、単一的なマネジメントでは組織がうまく機能しなくなった。求められるリーダーシップが、より複雑化、高度化しているのだ。
そこで、同社では研修とそれ以外の施策によって、「育てる側」の能力アップと、成長のスピード・アップに取り組んでいる。
同社では役割等級による階層別の教育体系を構築している。“内定者~入社2年目まで”と“入社3 年目~Ⅳ等級”(Ⅳ等級は一般的な課長代理クラス)までが「担当者クラス」。“Kクラス~Bクラス”(Kクラスは課長クラス、Bクラスは部長クラス)が「リーダークラス」と位置づけられている。この「リーダークラス」が「育てる側」の中心層と見てよいだろう。
「リーダークラス」に対しては、人事企画部主導で行われる基本的な研修と、社内カンパニー別の専門性を高める研修が行われている。