OPINION 3 組織内外の対立をパフォーマンス向上に活かす リーダーのための 「コンフリクト・マネジメント」
人のぶつかり合い(コンフリクト)は全てが悪いというわけではなく、中には有益なものもある。有害なコンフリクトは上手に排除し、有益なコンフリクトをむしろ積極的に起こす。
そして、新しい価値やイノベーションを生み出そうとするのがコンフリクト・マネジメントだ。 今後、組織が多様化し、文化や価値観の異なる人が一緒に働くようになれば、コンフリクトはますます増える。
リーダーが備えるべきスキルのひとつとして、コンフリクト・マネジメントの重要性が高まっている。
対立の解消だけが目的ではない
コンフリクトとは、人と人の対立やぶつかり合いのことだ。
平たく言えば、職場で起きるゴタゴタ全般のことを指すのだが、そう説明すると、「コンフリクト=悪」と考えてしまい、それを上手に解消することがコンフリクト・マネジメントの全てだと思ってしまう人が多い。
しかし、それは違う。コンフリクトには悪いものとよいものとがあり、その全体をうまくコントロールして組織のパフォーマンスにつなげていくことが、コンフリクト・マネジメントの本来の意義である。
よいコンフリクトとは、仕事上の理性的な意見のぶつかり合いを指す。よいコンフリクトが盛んになると、メンバー同士の意見やアイデアが前向きに衝突し合い、その中から新しい価値やイノベーションが生まれる。こうした理性的なコンフリクトは「タスク・コンフリクト」と呼ばれている。
一方、悪いコンフリクトとは、人間関係の好き嫌いから生じる感情的な対立、いがみ合いなどのことで、「リレーションシップ・コンフリクト」と呼ばれている(図1)。リレーションシップ・コンフリクトは、うまく解決して排除しなければならない。
つまり、コンフリクト・マネジメントとは、現場で起きているコンフリクトがよいものか悪いものかを冷静に見極め、悪いコンフリクトは解消する一方で、よいコンフリクトは積極的に起こして組織を活性化させ、仕事のパフォーマンスを上げていこうとする活動のことを指す。
人の多様性とコンフリクト
コンフリクトが起きる根本的な原因のひとつは、人の多様性だ。
性別、人種、経歴、価値観などが違う人が一緒に仕事をしようとすると、多くの場合コンフリクトが生じる。実際に、男性、女性、白人、黒人などの多様なメンバーを混合してつくったグループと、混合しないでつくったグループとでは、混合したグループのほうがよりコンフリクトが起きやすいことが、さまざまな研究によって確かめられている。