OPINION 2 リーダーシップのパラダイムシフトで求められる 全ての人がリーダーとなる 「出番型リーダーシップ」
経済環境は成長から成熟へと移行し、人材も多様化が進んでいる。
こうした時代に求められるのが多種多様なリーダーだ。
組織の全ての成員が持てる能力を十二分に発揮できる、強くて持続可能な組織を実現するには、多様な人材がそれぞれの能力を活かす「出番型のリーダーシップ」が必要だ。コーチングを日本に紹介する先駆けとなった榎本英剛氏に、今後のリーダーシップに不可欠なパラダイムシフトについて聞いた。
「強いリーダー」の限界
企業を取り巻く環境は、変化が激しく、今後も将来を見通せない状況が続くことが予想される。そんな不確実性の高い環境下では、これまで理想とされてきた、周囲の人をグイグイ引っ張る強いリーダーだけでは、生き残れない。
杉やヒノキばかりの林は、多種多様な木が生える雑木林よりも環境変化に弱い。企業も同様で、同じタイプのリーダーが金太郎飴のようにいる組織より、多種多様なタイプのリーダーがいるダイバーシティが進んだ組織のほうが環境変化に強いことは間違いない。
また、強いリーダーに率いられるチームでは、メンバーの能力が100パーセント発揮されないという弊害もある。指示や命令によって強制的に動かされるメンバーは受け身になり、自主性を発揮できず、いつまでたっても自立できない。
技術革新が早く、画期的な新商品や新サービスも、あっという間にキャッチアップされ、コモディティ化する時代である。
そんな時代だけに、企業にとっては人こそが最大の差別化ポイントであり、競争力の源泉なのだが、強いリーダーは、メンバー一人ひとりの能力を必ずしも最大限に発揮させることができない。ゆえに、個人の力の総和である組織の力が最大化することもない。
さらに、組織がフラット化する中、リーダーはプレイングマネジャーとして自らの仕事の責任や、メンバーの育成責任、さらにチームとしての結果責任も背負わされている。短期的に成果を出すことはできるかもしれないが、とても持続可能ではなく、リーダーが皆、疲弊してしまっている。こうしたリーダーの現状を見て、「私には人を引っ張ることなんてできない」という人が増えている。リーダーになりたい人が減っているということは、現在のリーダーの持続可能性が低下しているということだ。
多種多様なリーダーがいて、組織の全ての成員が持てる能力を十二分に発揮できる。こうした強くて持続可能な組織を実現するには、リーダーシップに対する考えを大きく変える必要があるのではないだろうか。
リーダーシップのパラダイムシフト
私は、図1に示すようなパラダイムシフトがリーダーシップに起きていると考えている。順に説明してみたい。まずは「、地位」から「人」へ。リーダーシップがどこに帰属するかについてのシフトである。今までは、部長や課長といった地位に就くことで、初めてリーダーシップを発揮できると考えられてきた。しかし今後は、地位に関係なく全ての人がリーダーであるという前提に立ち、誰もがリーダーシップを発揮することが求められるようになる。