人材教育 The Movie ~映画でわかる世界と人~ 第30回 「KANO 1931海の向こうの甲子園」川西玲子氏 時事・映画評論家
「KANO 1931海の向こうの甲子園」
2014年 台湾 プロデューサー・脚本:魏徳聖(ウェイ・ダーション)、監督:馬志翔(マー・ジーシアン)
日本には春と夏、2回の高校野球大会があって人気を博している。野球愛好国の中でも、こういう国は他にない。夏の大会は今年で97回目を迎える。1世紀近い歴史があるのだ。しかも昭和20(1945)年の敗戦以前には、台湾や朝鮮、満洲からも代表が出場していた。だがこの史実は今、歴史の彼方に消えつつある。そんな時にこの映画が誕生した。
『KANO』は昭和6(1931)年、満州事変の年に台湾代表として夏の甲子園大会に出場し、準優勝を成し遂げた嘉義農林学校野球部の活躍を描いた物語だ。KANOとは、ユニフォームに書かれた嘉義農林の校名である。
実は、私の父親は満洲代表として2回、甲子園の土を踏んでいる。我が家では当然のように語られてきたこの話を、友人知人に話すと毎回驚かれる。それほどまでに知られていないのが、私には残念でならなかった。だから、この映画の制作が発表された時は驚きと喜びで一杯だった。さらに関連書籍を出すこともできたから、二重の喜びである。