アンケートから見る「基本能力不足」 基本能力不足が最も顕著な世代 5割弱が中堅・管理職と回答
基本能力不足というと若手ばかりが注目される。
だが、基本能力が不足しているのは、本当に若手だけだろうか?そして「基本能力」とは、具体的に何を意味するのか?
それらを明らかにし、企業における基本能力不足の実態を把握するために弊誌ではアンケートを実施した。
本稿ではその内容を紹介する。
9~11月号の特集を通じて、基本能力の重要性を全階層に対して訴えてきた。そこで、連続特集最後となる本稿では、企業の基本能力に関する実態把握のために実施した「基本能力不足と教育施策の実態に関するアンケート」結果を紹介し、まとめとしたい。
アンケートでは、「読む」、「書く」、「考える」だけでなく「話す」、「聴く(聞く)」も基本能力に含み、さらに、若手(入社3年目)、中堅(入社4~12年目)、管理職(13年目以降)の階層ごとに質問を設定した。
アンケートの構成は、【Ⅰ】全体的な基本能力不足について、【Ⅱ】基本能力不足を感じる具体的場面について、【Ⅲ】教育施策について、の3部とし、各階層における基本能力低下の実態把握をめざした。
なお、回答者は66名で、回答者の属する企業の規模・業種による有意な差は見られなかった。そのため、ここでは詳細は割愛する。
【Ⅰ】基本能力全般基本能力の不足は3~10年前から実感が70%
まず、階層ごとに基本能力の不足を感じるかどうかを聞いたところ、「非常に感じる」と「それなりに感じる」を合わせると、若手は99%、中堅は86%に上った。管理職についても、49%が問題を感じていることがわかった(図表1)。
「基本能力の不足が最も顕著だと感じる階層」(図表2)については、若手は54%と過半数を占めたものの、中堅が31%、管理職が15%とそれぞれの基本能力の不足を、若手以上に深刻に捉える人材開発部担当者がいることが示唆された。
また、基本能力の不足を感じ始めた時期について尋ねたところ、「ここ1、2年前から」が15%、「3~10年前から」が70%、「10年以上前から」が15%、「基本能力の不足は感じない」が0%であった。
ゆとり教育を受けた世代が、新入社員として入社し始めたのが4年前の2006年。アンケート結果からは、それ以前から基本能力不足を感じる教育担当者が多くいたことがわかる。10年前はちょうど、職場や家庭へパソコンやインターネットの普及が進んだ頃である。これらの普及でコミュニケーションの方法が変わったことなどが、基本能力の不足と関係があると言えるかもしれない。
【Ⅱ】能力不足を感じる具体的場面相手の立場に立てず噛み合わない職場が浮き彫りに
ここからは、それぞれの基本能力の不足を感じる具体的場面について紹介していく。
「読む力」(図表3)、「書く力」(図表4)、「考える力」(図表5)については、複数選択と自由記述、「話す力」と「聴く(聞く)力」については自由記述のみでアンケートを行った。
「読む力」のA「日本語の意味をきちんと理解できない」、B「メールやマニュアルなど、文書による指示をきちんと理解できない」、「書く力」のA「誤字脱字や文法の間違いなどが多い文章をよく見る」、D「社外に出すメールなどで、ビジネスマナーができていない」といった、日本語やビジネスマナーに関わることは、若手が顕著に高い。逆に言えば、こうしたスキルは、経験を積むことで解決していくことと言えるかもしれない。