TOPIC-② 国際女性ビジネス会議「明日を動かそう~新しい人、企業、社会~」レポート 明日を動かすために、今できること
働く女性が互いに学び合い、高め合える場をつくろうと1996年から始まった「国際女性ビジネス会議」。今年で15回目を迎えた本カンファレンスは、女性起業家としても有名な佐々木かをり氏が代表を務める国際女性ビジネス会議実行委員会が主催するもので、毎回1000名ほどが参加する。参加者の95%以上が女性という、熱気あふれるカンファレンスだ。2010年7月24日に開催された会議の様子を紹介する。
「明日をつくるために大切なのは、今、自分が志高く、前進しているかを問うこと。お互いにお互いの良い体験をつくり、今日この場で楽しい1日を過ごすことから、明日をつくっていきましょう」
冒頭、実行委員長の佐々木かをり氏が今回のテーマ「明日を動かそう~新しい人、企業、社会~」について挨拶し、満場の拍手とともに第15回国際女性ビジネス会議が幕を開けた。朝10時の開会から懇親会終了の20時まで、10時間にも及ぶ長丁場。
会議の構成は、午前中に後述の鎌田由美子氏、秋池玲子氏の講演と、林文子氏(横浜市長)、田坂広志氏(多摩大学大学院教授)、吉田和正氏(インテル代表取締役社長)などによる10分講演、午後はテーマごとの分科会となる。本稿では志高く、明日をつくるために行動を重ねてきた2人の女性──「エキナカ」の仕掛け人として知られる鎌田氏と、産業再生機構で企業再生に尽力した秋池氏の講演を紹介する。
■講演① 新事業への挑戦とチームワーク ~エキナカ・地域活性化~
JR東日本は鉄道事業を中核とした企業ですが、少子高齢化の影響で長期間にわたって乗客数が減少し続けてきました。それでも業績を伸ばしてこれたのは、さまざまな新サービス投入の効果です。
しかし将来を考えた時、1日1700万人以上が利用するという駅そのもののポテンシャルを活かし、新しい価値を提供していくことが重要との認識があり、これが「通過する駅から集う駅へ」をコンセプトにスタートした、「ステーションルネッサンス」という会社の中期計画につながっていきます。その1つがエキュートであり、今、多くの方にご利用いただいているエキナカです。
エキナカ始動!最大の壁は?
けれども、単に通過するだけだった駅で足を止めていただくためには、駅が魅力的な場所になる必要があります。そこで、駅全体を1つの空間としてとらえ、設計し直す必要がありました。そのためには、縦割り組織の壁を乗り越え、会社全体で取り組まなければなりません。
一般の方にはわかりにくいと思いますが、駅構内の施設は、コンコースは鉄道の管轄、店舗は子会社の管轄といったように、管轄と権限が複雑に入り組んでいます。
そのため駅を1つにという総論には皆が賛成しながら、各論では強固な反対が巻き起こったのです。たとえば駅のコンコース全体に空調を行き渡らせたり、駅と店舗部分のトイレの清掃レベルを揃えるだけでも、各場所や物品、設備を管轄する部署や関連会社を集めての調整が必要になるのです。
グループ会社社員を起用し若いチームで挑戦する
エキナカ事業では、ES(従業員満足)の向上にもこだわりました。私は入社以来一貫して流通にかかわってきましたが、駅構内の労働環境の悪さにはずっと疑問を感じていました。冬は寒く、夏は暑い。後方施設が遠く、ゆっくり休憩も取れない。こんな環境で、どうやってお客様にすばらしいサービスを提供できるのでしょうか。CS(顧客満足)を高めるためには、まずESを高める。これが私がやりたかったことです。
店舗面積を削ってでも店舗に最も近い場所に後方施設をつくり、駅と交渉して物流動線を確保するなど、環境整備に取り組みました。