TOPIC-① 「脱!無縁職場シンポジウム~ひとりランチ社員が増えていませんか?~」レポート 職場の縁とは何か?無縁職場を脱するために必要なこと
去る7月28日、東京国際フォーラムにてFeelWorks主催による『脱!無縁職場~ひとりランチ社員が増えていませんか?~』と題するシンポジウムが開かれた。同シンポジウムは、コンサルタント会社をはじめ、企業の人材開発の第一線で活躍する人物を招いて職場の縁とは何か、必要なものなのかについて問い直すというものだ。若手社員、ミドルマネジャー、外資系企業と日本企業、そして時代の変化とともに現代の職場の縁はどのように変化しているのかについて考える4つの講演とパネルディスカッションの様子をレポートする。
本シンポジウムは、主催者FeelWorks代表取締役前川孝雄氏による趣旨説明から始まった。
低迷し続ける景気、成果主義の導入、グローバル化の進展、雇用形態の多様化などにより、組織は個人に配慮する余裕をなくし、個人も組織に期待が持てなくなってきている状況にある。多くの人がそうした状況に問題意識を持ちながらも打開策を見出せない今、それぞれの立場から「個人の働きがいと企業・組織のあるべき姿」について真剣に考える必要があると前川氏は訴えた。
これを受け、本シンポジウムでは、組織の目的理解が薄れ、個々人が役割を果たし貢献できているかが自他ともに認識できなくなっている状態を「無縁職場」と命名。そして、どうしたらそれらの「縁」を回復することができるのかを、会社組織の実態に詳しいシンクタンク研究員、企業の人事、大学教員、人事コンサルタントを講師・パネラーとして招き、講演とパネルディスカッションを通して論じた。
■講演① 会社組織に疑心暗鬼になる若手社員のリアル
阿部氏は、特定の対策を講じるだけでは無縁職場を解決するのは困難と前置きしたうえで、2社のケースを例に若手社員のメンタルストレスの原因を探り、上司に求められる対応策を提言した。
①仕事ができる若手の失踪事件
メーカーに勤める入社4年目の男性社員が昼休み中に失踪。しばらくすると九州の警察から彼が自殺未遂をして保護されたという連絡が会社に入った。
②できる社員のメンタル不調
周囲から「彼女がいるから仕事がまわる」と信頼される若手女性社員が、突然「課長のおやじ臭がひどくて仕事に集中できない」と人事部に相談。
一見突如として起こった出来事に見えるが、阿部氏が面談したところ、①では職場で「助けて」といえない雰囲気が、②では業務指示だけして反応が無機質な課長が原因だったことが明らかになったという。つまり双方の事件ともに、コミュニケーション不足が起因していたのだ。
「コミュニケーションは、『情報』+『感情』のやり取りです。ただ、双方の事例とも『感情』への留意が欠けていた。人間は、他人から受け入れられたいという根源的な欲求を持っています。これが満たされないとストレスが溜まるだけで、自信もつかないし、誰かの役に立ちたいとも思えません」(阿部氏、以下同)
富士ゼロックス総合教育研究所『人材開発白書2009』によると、若手社員に「日常業務において大切にしている“関わり先”」を尋ねたところ、高い割合で同じ部署のメンバー(上司62.9%・先輩56.6%・同僚56.8%・後輩40.1%)を選択したという。この調査から、職場のメンバーは、若手社員に大きな影響を与える人たちであることがわかる。また、同調査では、若手社員は職場のかかわりを通して業務支援:業務に必要な知識やスキルの提供・スムーズに進めるための取り計らい内省支援:自分自身を振り返るきっかけづくり精神的支援:仕事の息抜きや心の安らぎを与えてもらうなどを期待しているという。
「若手・中堅社員の成長感が高い企業の特徴を見ると、上司がメンバーの人間関係の維持に努めることで、若手社員が職場の仲間から支援を受けている実感を持てることがわかりました。上司が直接支援することができなくても職場内に相互学習を促す場や雰囲気があり、間接的に若手社員を支援する環境ができていれば、若手は成長実感を持てるのです。必然的にメンタルヘルスの問題も少なくなるのではないでしょうか」これらのまとめとして最後に阿部氏は、縁を感じる職場づくりのためには、•互いに仲間として受け入れてくれる風土が感じられる•成長実感、自分が存在する意味が感じられるという土壌が組織にあることが重要であるとした。そして「そうした実感を得られない時、若手は組織に対して疑心暗鬼になる」といい、本講演を締めくくった。
■講演② 会社の不条理現象とモチベーション変革の視点
10年前と比較すると2倍に膨れ上がったともいわれるミドルマネジャーの業務量。ミドルマネジャーを悩ませているのは、業務量の増加だけではない。
「シンクタンクでの仕事を通して最近強く感じているのが、データや論理が通用しない“不条理”が現実社会には山積しているという点です。たとえば、『あの件は、創業者案件だから手を出してはいけない』『あいつを男にするまでやるんだ』というようなものです」(松田氏、以下同)