How should we write? 書く力を武器にする
先のインタビューで阿刀田高氏は、書き手は覚悟を持って書き、書いたことに責任を持つ必要があると述べている。
ではそのように書くためには、何が必要なのだろうか。
ここでは「書く」ことを分解し、仕事の“武器”として使いこなすまでの道筋を考える。
職場から失われた添削OJTの光景
「書き散らす」のではなく「書く」。簡単にいえばしっかりと書く、ということだが、そのためには何が必要なのだろうか。結論からいえば、訓練が必要である。
仕事で書く文章には、誰かを説得したり、人との関係をつくったりするなど、必ず目的がある。従来あまり意識されていなかったが、新人から若手、中堅社員となるにしたがって文章の目的も変化し、書く文章の難易度が高まっていく。こうして徐々に難易度の高い文章を書いていくことで、「書く力」の強化が図られてきたのではないか。
現在50代ほどのビジネスパーソンの中には、新人時代に「怖い上司」から、「てにをは」レベルまで文章を細かく直された経験を持つ人が多い。「最初は元の文章がまったく残らないほど赤字(添削)が入った」と語る人も珍しくない。ここまで添削するには非常に手間隙がかかるものだ。
しかし、このようなやり取りを半年から1年ほど繰り返す風景が、ひと昔前の日本の職場にはあった。
やり取りを重ねていくにつれて、てにをはや言葉遣いについての赤字が少なくなり、内容についてのコメントが増えていく。そうしてある日、「OK」が出る。「『君が書いているなら大丈夫だろう。それで出してくれ』と上司からいわれた時には本当に嬉しかった」と、ある経営者は振り返る。